現場で立ち止まって手を合わせる人(c)朝日新聞社
現場で立ち止まって手を合わせる人(c)朝日新聞社
堤将太さんと一緒にいた女性の話をもとに県警が作成した男の似顔絵(c)朝日新聞社
堤将太さんと一緒にいた女性の話をもとに県警が作成した男の似顔絵(c)朝日新聞社

 神戸市北区で2010年10月、当時16歳の私立高校2年生・堤将太さんが何者かに刺殺された事件で、兵庫県警は4日、愛知県内に住むパート従業員の元少年(28)を殺人の疑いで逮捕した。

【写真】兵庫県警が作成した男の似顔絵

 事件は11年前にさかのぼる。堤さんは10年10月4日午後10時45分ごろ、当時交際していた少女と北区筑紫が丘の路上で座っていたところ、無言で近づいてきた男に突然、刃物で刺されて死亡した。男は現場から逃走し、兵庫県警が捜査を進めていたが難航。警察庁は12年、有力な捜査情報の提供者に公的懸賞金を支払う「捜査特別報奨金」の対象に指定していた。

 警察の執念が実り、11年の月日を経て逮捕につながったが、疑問の声が多く寄せられたのが逮捕された元少年の匿名報道だ。

 犯行当時は17歳だったため、少年の将来の更生を可能にする観点から実名報道を禁じている少年法61条が適用される。この少年法については5月21日、国会で「改正少年法」が成立している。20歳未満の犯罪は原則匿名だったが、改正後は18歳と19歳の少年について、起訴された時点で大人と同じように実名報道が可能になった。

 また、これまで少年院に送られていた強盗や放火などの罪を犯した18歳と19歳の少年についても、検察に送致できるようになり、有罪となれば刑務所で刑罰を受けることになる。来年4月1日から施行されるが、今回の事件は元少年が犯行当時17歳であるため、改正少年法が施行後も匿名報道は変わらない。今回の被疑者逮捕について兵庫県警のメディア発表も実名ではなく、『A男28歳(当時17)』だった。

「事件当時17歳でしたが、逮捕されずに11年間暮らしていた。28歳の成人男性が逮捕され、元少年という報道には違和感があります。警察も矛盾を抱えているのではないでしょうか。犯行当時が未成年であれば実名で報道されないで済んでしまう。こういうケースにどう対応するか。法律が追い付いていない側面があります」(元テレビ局社会部記者)

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