そしてイジメは止まりました。

 僕は先生による体罰を推奨しているわけではないし、今の時代に体罰はダメです。

 でも。うちのクラスでイジメが止まってから数か月後。他の学校でイジメられて、葬式ごっこを行われた生徒が自殺したというニュースが新聞に出ました。

 それを見て、本当にゾっとしました。あの時、B先生が止めてくれなかったら、A君は自らの命を殺めてしまったかもしれないと。

 今でも思い返すと汗が出る。もし、あの時イジメが止まらず続いていて、A君が亡くなってしまったら、僕らは一生その思いを背負って生きていかなければいけない。子供を抱いているときもそのことは胸によぎるはずなんです。

 妻と結婚して19年。妻は学生時代にイジメを受けていました。芸人さんの中にはイジメを受けていたという人、たまにいます。そのイジメから抜け出すために、人を笑わせて芸人さんになった。芸人さんになってその話をしているから、傷は癒えているだろうと思う人も多いかもですが、僕は妻と結婚して気づいたのは、イジメられた側はその傷は一生残る。そして「イジメられた側は、イジメた人のことを一生覚えている」と教わった。

 イジメが止まっても、傷をつけた人はずっとその人の心の中にも残る。

 今回、小山田さんのことをきっかけに、改めてイジメについて考える人も増えているかもしれない。

 イジメた方は忘れていても、イジメられた方はずっと覚えている。「いじめを見て見ぬフリした」最低の学級委員長のこともきっと覚えているだろう。

 忘れてない。だから自分も忘れてはいけない。ずっと。

鈴木おさむ(すずき・おさむ)/放送作家。1972年生まれ。19歳で放送作家デビュー。映画・ドラマの脚本、エッセイや小説の執筆、ラジオパーソナリティー、舞台の作・演出など多岐にわたり活躍。パパ目線の育児記録「ママにはなれないパパ」(マガジンハウス)が好評発売中。毎週金曜更新のバブル期入社の50代の部長の悲哀を描く16コマ漫画「ティラノ部長」と毎週水曜更新のラブホラー漫画「お化けと風鈴」の原作を担当し、自身のインスタグラムで公開中。YOASOBI「ハルカ」の原作「月王子」を書籍化したイラスト小説「ハルカと月の王子様」が好評発売中。作演出を手掛ける舞台「もしも命が描けたら」が8/12~22東京芸術劇場プレイハウス、9/3~5兵庫芸術文化センター阪急中ホール、9/10~12穂の国とよはし芸術劇場PLAT主ホールにて上演。

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鈴木おさむ

鈴木おさむ

鈴木おさむ(すずき・おさむ)/放送作家。1972年生まれ。19歳で放送作家デビュー。映画・ドラマの脚本、エッセイや小説の執筆、ラジオパーソナリティー、舞台の作・演出など多岐にわたり活躍。

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