ところが、そんな「お宝」も今や大暴落しているという。昨年6月、ニュースサイトのTMZスポーツが、現在の価値は業界筋で25万ドル(約2700万円)から40万ドル(約4400万円)と見積もられていると伝えたのだ。この20年あまりの間に何があったのか? マグワイアの記録が、2001年にバリー・ボンズ(ジャイアンツ)に塗り替えられたこともあるだろうが、最大の理由はこの記録が現在は“汚れた”ものになっていることにある。

 マグワイアは1998年当時も筋肉増強剤の一種であるアンドロステンジオンの服用は認めていたものの、引退後の2005年にかつての同僚だったホセ・カンセコの著書でアナボリックステロイド使用を暴露された。その時は沈黙を貫いたが、2010年にカージナルスの打撃コーチとして現場復帰するにあたり、“みそぎ”として「ステロイドには手を出なければよかった。愚かな過ちだったと思うし、心から謝罪したい」との声明を発表し、ステロイド使用を正式に認めている。

 2003年にコルクバットの使用が発覚したソーサは、その2年後にはMLBのドーピング問題に関する下院公聴会で証人喚問された際に禁止薬物の使用を全面否定していたが、引退後にはドーピング検査で陽性反応を示していた過去を報じられた。マグワイアは歴代11位の通算583本塁打、ソーサは同9位の通算609本塁打を記録しながら、野球人にとって最高の栄誉たる殿堂入りを果たせずにいる。2001年にシーズン73本塁を放ち、通算では歴代最多の762本塁打、MVP受賞7回を誇りながらも、ステロイドの使用に関しては限りなく“クロ”と見られているボンズも同様である。

 いずれも薬物の手を借りずとも、殿堂入りするだけの実績を残していた可能性を考えると残念でならないが、メジャーリーグがストライキによって失ったファンを取り戻すためには、彼ら「ステロイド・ボーイズ」は “必要悪”だったのかもしれない。しかし、時代は変わった。今では薬物規定に違反した選手には1回目で80試合、2回目で162試合の出場停止、そして3回目は永久追放という厳しい処分が待っている。

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ポストステロイド時代で初のシーズン60本塁打なるか