霜降り明星の粗品(C)朝日新聞社
霜降り明星の粗品(C)朝日新聞社

 霜降り明星の粗品は熱海発言で炎上したばかりであるが、漫才の大会『M-1グランプリ』、ピン芸の大会『R-1グランプリ』の両方で優勝を経験している「二刀流芸人」である。これだけでもとてつもない偉業なのだが、彼の才能はお笑いにとどまらない。最近では本格的に音楽活動を始めたことでも話題になっている。

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 粗品は2歳からピアノを習っていて、クラシック、邦楽ロック、アニソン、ボカロ(ボーカロイド)など多彩なジャンルの音楽を聴いてきた。ピアノ、ギターをはじめとして数多くの楽器を弾きこなす粗品は、自身のYouTubeチャンネルでボカロ楽曲を発表してきた。2021年1月には、ユニバーサルミュージック協力のもとで自身の音楽レーベル「soshina」を立ち上げた。

 そして、ドラマ主題歌のプロデュースを手がけた。粗品が作詞・作曲・編曲を担当したファーストサマーウイカの新曲『帰り花のオリオン』は、6月スタートのドラマ『#コールドゲーム』(東海テレビ)で使用されている。

 バラエティ番組でも活躍しているファーストサマーウイカは、以前から粗品の作る楽曲に注目しており、その音楽センスに惹かれていたことから、オファーを出したという。7月14日放送の『2021FNS歌謡祭 夏』(フジテレビ)では、2人がその楽曲を披露した。

 音楽番組の大舞台で、粗品は初めて弾くという五弦ベースを披露した。力強い歌声を響かせるファーストサマーウイカの隣で、そつなく演奏をこなしていた。

 2021年6月14日深夜放送の『ファーストサマーウイカのオールナイトニッポン0』では、粗品がゲストとして登場。自身のプロデュース楽曲について、ファーストサマーウイカと本気の音楽談義を交わしていた。粗品の音楽活動はすでに芸人の余技のレベルを超えている。

 粗品は芸人である以前に、もともとクリエイター気質の人間である。純粋にモノ作りに興味があり、細部にまでこだわりを見せる。表現の形が違うだけで、お笑いでも音楽でも粗品のやっていることの本質は変わっていない。

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ラリー遠田

ラリー遠田

ラリー遠田(らりー・とおだ)/作家・お笑い評論家。お笑いやテレビに関する評論、執筆、イベント企画などを手掛ける。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり<ポスト平成>のテレビバラエティ論』 (イースト新書)など著書多数。近著は『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)。http://owa-writer.com/

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人を楽しませることに妥協しない気質