デルタ株の流行など感染収束の見通しが立っていない状況で、保護者や引率する教員らの不安はぬぐえず、児童・生徒の観戦の賛否については意見のわかれるところ。


 
 専門家はどう見るか。学校リスクに詳しい名古屋大の内田良准教授(教育社会学)はこう指摘する。

「観戦の教育的な意義はあり、特にパラリンピックは多様性の理解を育むのに非常にいい機会になる。一方で、観戦は感染リスクだけではなく、先生たちは特に熱中症の危険を心配しています。また、観戦の制約について決まるのが遅れ、引率者の準備の負担は相当に大きくなっている。五輪の観戦は今からでも止めたほうがいいのではないでしょうか」

 開催までに時間のあるパラについてはこう提案する。

「観戦することが前提になっているのであれば、希望する家庭にチケットを配るなどして自由参加にしたらどうか。保護者が見ていれば、熱中症のリスクも抑えられるでしょう。『保護者の都合で見に行けない子はかわいそうだ』というのであれば、タブレットを使って主催者が動画配信をするなど対応すればいい。観戦の手段は柔軟に考えるべきだと思います」

 子供たちの安全・安心な観戦は本当に確保できているのか。関係者の責任ある対応が問われている。(AERAdot.編集部 吉崎洋夫)

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吉崎洋夫

吉崎洋夫

1984年生まれ、東京都出身。早稲田大学院社会科学研究科修士課程修了。シンクタンク系のNPO法人を経て『週刊朝日』編集部に。2021年から『AERA dot.』記者として、政治・政策を中心に経済分野、事件・事故、自然災害など幅広いジャンルを取材している。

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