熱海市内の土砂崩れ現場で捜索にあたる自衛隊、警察官ら(C)朝日新聞社 
熱海市内の土砂崩れ現場で捜索にあたる自衛隊、警察官ら(C)朝日新聞社 
熱海の土砂崩れ現場
熱海の土砂崩れ現場

 静岡県熱海市で3日に起きた土石流により、4人が亡くなり、依然として多くの安否不明者がいるなか、6日午前に生存率が著しく下がるとされる「発生72時間」が過ぎた。捜査活動に焦りが募る現場だが、今回の土石流に対する官邸の初動に専門家から疑問の声があっている。

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 首相官邸で大雨に関する関係閣僚会議が開かれたのは、3日の夕方5時03分。熱海市で大規模な土石流が発生した午前10時半から7時間弱が経過していた。陸上自衛隊OBで、拓殖大学大学院地方政治行政研究科特任教授・防災教育研究センター長の濱口和久氏は、初動における時間の経過をこう指摘する。

「中央の司令塔としては遅すぎです。災害発生直後、現場の映像はテレビやSNSでも流れており、誰もが見ていました。1995年1月17日早朝に起きた阪神・淡路大震災の時もそうでした。当時、村山富市首相でしたけども、現地から情報が上がっていたにも関わらず、村山首相は公務を予定通りにこなし、半日以上も放置して夕方以降になってから本格的に動いた。今回もそれと同じようなタイムロスがあったと思います」

 災害が発生した、3日の首相動静(朝日新聞7月4日)によると、午後1時40分に菅首相は棚橋泰文防災担当相と沖田芳樹内閣危機管理監と会っている。その後、2時52分に杉山産婦人科の杉山力一理事長と、そして、3時28分に和泉洋人首相補佐官、吉田学新型コロナウイルス感染症対策推進室長、樽見英樹厚生労働事務次官と会談するなどして公務をこなしていた。

 濱口氏はこう指摘する。

「防災担当や危機管理監と会った時に指示を出して、現場で上手くやってくれというような判断をしたのかもしれません。ただ、あれだけ発生状況の映像が出ていて、見ていれば、相当多くの犠牲者が出ているかもしれないということは想像できますし、二次災害が発生する可能性もあるということはわかっていたはずです」

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官邸の初動を検証すべき