「しかも、今では現地の人がSNSを利用してつぶさに状況を発信でき、かつてよりは、中央に情報が届くまでに時間がかからない。司令塔的な機能として、速やかに関係閣僚会議を開き、政府としてどういう方針を取るのか、そして問題意識の共有などが、もっと早い段階でなされるべきだったと思います」

 発生当日の午後3時頃、静岡県知事からの災害派遣要請に基づいて、約30人の自衛隊が現場に到着した。人数の規模としては妥当だったのだろうか。

「自衛隊出動のスピード感としては妥当だったと思います。おそらく、3日土曜日の発生だったので先発隊として30人が集められ、すぐ派遣。さらに3日夜から4日未明にかけて自衛隊、警察や消防など約1000人が派遣され、救助活動にあたりました。もし、平日だったら、もっと状況が把握できて大きな人数が当日から派遣されたと思います」(濱口氏)

 政治ジャーナリストの角谷浩一氏は、官邸の初動対応をきちんと検証するべきだという。

「正午には土石流の映像がニュースで流れていたので、官邸が知らないわけがありません。わかっていて公務の日程をこなしたのか。それもと、それほどの問題だと思っていなかったのか。ここは、なぜ遅れたのかを検証すべきだと思います。ただし、被害規模について事務方が首相に的確に伝えていなかったのかもしれない。本来、ある一定の震度以上の地震が起きたり、外国からのミサイルが発射されたりしたら、危機管理官関係者は休日や夜中を問わず30分以内に官邸に参集することになっている。それが機能していたのかどうか、検証のポイントです」

 ただ、菅首相はかつて「危機管理の菅」と呼ばれるほど災害に対して敏感だった。

「菅首相は、官房長官時代に、誰よりも早く官邸に駆け付けていた人であったことを考えると、いささか不思議な感じがする」(角谷氏)

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「危機管理の菅」に何があったのか