令和の天皇の土台にあるのは、研究者としての思考だ。

 水の研究をライフワークにしてる陛下は、水と衛生問題の研究者でもある。07年には国連「水と衛生に関する諮問委員会」の名誉総裁に就任。もちろん当時は、新型コロナは発生していない。だが、水と衛生の問題は、人びとの健康を支える重要なテーマ。13年には皇族として初めて、米ニューヨークの国連本部で「水と災害に関する特別会合」に出席し、各国の研究者を前に基調講演をした。

 元建設省河川局長で、第3回世界水フォーラムの運営に事務局長としてかかわった尾田栄章(ひであき)さんは、皇太子時代から陛下の水問題での相談役を長く務めてきた。

 尾田さんは、「今回の長官の発言も新型コロナ感染症についても、私は分かりません」と前置きしたうえで、感染症は水問題におけるファクターのひとつではある、と話す。

「水と衛生の問題は、人間の生存に不可欠なテーマです。汚染された水を飲み続けることでコレラなどの感染症の発生に繋がります。水道やトイレなどの水関連設備が整っていない国もたくさんあります。たとえば、今回の新型コロナ対策でも、感染を防ぐために手洗いや口をすすぐことが推奨されています」

 続けて、尾田さんは説明する。

「でも、日本のように水道の蛇口をひねれば、きれいな水が出る国は、世界全体で見ればごく一部です。きれいな水が確保されなければ、衛生の確保は望めません。陛下は、長い時間をかけて、そういった問題に携わられ、国連を含む国際的な場で講演されてきておられるのです。先日、6月25日にもリモートではありますが、国連の『水と災害に関する特別会合』で基調講演をされておられます」

 この会議で陛下は、世界中で新型コロナウイルスの脅威を克服する努力が続けられていると話したうえで、講演の最後を次のような強いメッセージで締めくくった。

「災害や疫病の記憶を後世に伝えつつ、その教訓を生かすべく次の災害や疫病に備えながら、誰一人取り残されることなく、健康で幸せな毎日を享受できるような社会の構築に向けて、私も皆さんと一緒に努力を続けていきたいと思います」

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学習院時代からの陛下のご友人は