この内村の「誰かを傷つけることに敏感になる」という意識は、毎日のようにSNSで多くの議論が巻き起こる現代においてことさら重要な要素だ。

「傷つく」という感情は人ぞれぞれの尺度で決まる。それだけでなく社会全体で見たときの価値観が、あなたが生きてきた時代とは随分変化している現代の若い世代においては、「その線引き」がどこにあるかが余計にわかりづらい。たとえあなたがそのつもりはなくても、相手を傷つけている可能性は十分にある。

 例えば、会社でパワハラやセクハラが起きたとき、上司側の言い分として「嫌がっていると思っていなかった」というようなことをたびたび耳にするが、これはまさに上司側が傷つけることに「鈍感」であることから起きている場合が多いのではないか。
 
 リーダーであるあなたが、そういった行動を起こさないことはもとより、そのような状況が知らぬ間に生じていないか、チームの誰かが傷つくことに誰よりも敏感となることで、チーム全体の意識も変わっていく。

 だからリーダーは、自身の尺度のみで物を見るのではなく、受け手側、周囲の人間、部下、後輩、お客さま、それ以外の人、あらゆる立場の人が痛みを感じていないかどうかに強く意識を働かせつづける必要があるのだ。

 そして、もしもチーム内において、傷ついているメンバーに気が付いたなら、リーダーはすぐに「行動」しなければならない。

 日本テレビ『世界の果てまでイッテQ!』総合演出・古立善之氏が、「内村から唯一叱られた」のは、大学生だったか卒業後すぐか、いずれにしてもまだ駆け出しのイモトアヤコ氏が、初めて「バンジージャンプ10本勝負」のような海外ロケに挑んだときだという。

「結果的にイモトの出世作になったロケでもあったんですが、内村さんから『イモトはまだテレビに出たてで、周りのディレクターやスタッフから“飛べ”と言われたら、絶対ノーと言えない。そういう絶対ノーって言えない人間を飛ばせるのはダメだよね』と、かなり強く言われました。要するにノーって言える自由度がある人が、自分の意思で頑張ってバンジージャンプをするのは笑えるけど、自由意思がない人間が、もう飛ぶしかないと追い詰められた状況で飛ぶのは違う、と」

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部下の意識に「敏感」であること