鴻上尚史さん(撮影/写真部・小山幸佑)
鴻上尚史さん(撮影/写真部・小山幸佑)

写真は本文とは関係ありません(※イメージ写真/iStock)作家・演出家の鴻上尚史氏が、あなたのお悩みにおこたえします! 夫婦、家族、職場、学校、恋愛、友人、親戚、社会人サークル、孤独……。皆さまのお悩みをぜひ、ご投稿ください(https://publications.asahi.com/kokami/)。採用された方には、本連載にて鴻上尚史氏が心底真剣に、そしてポジティブにおこたえします
写真は本文とは関係ありません(※イメージ写真/iStock)
作家・演出家の鴻上尚史氏が、あなたのお悩みにおこたえします! 夫婦、家族、職場、学校、恋愛、友人、親戚、社会人サークル、孤独……。皆さまのお悩みをぜひ、ご投稿ください(https://publications.asahi.com/kokami/)。採用された方には、本連載にて鴻上尚史氏が心底真剣に、そしてポジティブにおこたえします

 幼少時に兄から受けた性的悪戯の記憶に苦しむ40歳女性。母親に告白するかどうか葛藤する相談者に、鴻上尚史が洞察する、相談者の「深い部分での怒り」とは……。

【相談107】幼少時に兄から受けた性的な悪戯を、母親に告白するか否か、葛藤しています(40歳 女性 サム)

 幼少時に兄から受けた性的な悪戯を、母親に告白するか否か、葛藤しています。

 兄には覚えている限り数回、夜寝ている時に胸を触られたり、キスをされたり、お尻にセイキを当てられたりした事があります。

 当時私は中1、兄は中3、母親を含めて3人同じ部屋で寝ていました。

 母は離婚後、私達を連れて実家に身を寄せていて、六畳の部屋だけが私達のスペースでした。

 母は看護師で夜勤もありました。

 触られたりしていたのは母がいない夜でした。

 私は寝たフリをしてやり過ごしていました。

 今も急にフラッシュバックする時があり、苦しいです。

 兄とは年賀状や時候の贈り物程度の付き合いでほとんど顔を合わす事はありません。

 ただ母親とはよく電話で話をしたりメールをしたりはします。でもその度に過去の経験がフラッシュバックします。

 そのため母親と連絡をとるのがとても苦痛です。

 最近とくにそのフラッシュバックが酷くなるので、母からの電話に出なかったり、メールをスルーしています。

 母はおそらく寂しく思っていると思います。

 理由を話して連絡をとるのを控えたほうがいいのか、このまま私の胸に秘めてスルーし続けるのがいいのか、どうしたらいいのか解りません。

 母は感情的になると、自分の事は棚に上げて徹底的にこちらを傷付けたり痛めつける言葉を使うので、正面きって言い合いするのも怖いです。

【鴻上さんの答え】
 サムさん。つらい目にあいましたね。そして、今もつらいですね。

「理由を話して連絡をとるのを控えたほうがいいのか」と書かれていますが、今の状態でサムさんが「理由」を母親に話したら、とても悲しい結果になる予感がします。最悪、母と娘の関係が壊れてしまうかもしれません。

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鴻上尚史

鴻上尚史

鴻上尚史(こうかみ・しょうじ)/作家・演出家。1958年、愛媛県生まれ。早稲田大学卒。在学中に劇団「第三舞台」を旗揚げ。94年「スナフキンの手紙」で岸田國士戯曲賞受賞、2010年「グローブ・ジャングル」で読売文学賞戯曲賞。現在は、「KOKAMI@network」と「虚構の劇団」を中心に脚本、演出を手掛ける。近著に『「空気」を読んでも従わない~生き苦しさからラクになる 』(岩波ジュニア新書)、『ドン・キホーテ走る』(論創社)、また本連載を書籍にした『鴻上尚史のほがらか人生相談~息苦しい「世間」を楽に生きる処方箋』がある。Twitter(@KOKAMIShoji)も随時更新中

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