内村さんが一番頑張っている姿をみせられたら、こっちはもう頑張るしかないじゃないですか。これは、内村と舞台で共演する芸人や番組ディレクターなど、各所の関係者が声をそろえて言うセリフだ。

 ここで重要なのは、内村が「誰よりも一番完璧である」のではなく、「誰よりも一番汗をかく」リーダーである点だ。
 
 リーダーはつい、間違いやミスを犯さない「完璧さ」をリーダーの大事な資質と捉えてしまいがちだ。しかし、内村への周囲の評価を読み解くと、チームをともに動かす際に求められるのは、汗をかくことであり、必ずしも完璧なパフォーマンスをすることではないのがよく分かる。

 バク転にしても、 20 代の男性タレントが披露するキレがあるパフォーマンスに、内村はかなわない。けれど何日にも渡り練習を重ね、満身創痍(まんしんそうい)で繰り出されるたった一度の回転が、共演者やスタッフ、視聴者の心をぐっと深くつかんでしまう。
 
「チームを動かすリーダー」に「完璧さ」は必要条件ではない。「人を動かす」上で大切なのは、「人の“心”を動かす」ことだと筆者は考えている。そして人の心を動かすトリガーは、「パフォーマンスの素晴らしさ」ではなく、素晴らしいパフォーマンスを生もうと「努力する姿勢」にある。
 
 すなわち周囲の人間が動かされるのは、リーダーの「完璧な姿」ではなく、「もがいている姿」であり、内村は無意識的に“それ”を体現している人といえる。

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 チーム内村が自走型である最大の理由は、とてもシンプルで「リーダーが最も汗をかき、もがいているから」。なにも完璧である必要はない。誰よりも努力を怠らず、その姿をみせることで、部下やメンバーをモチベートすることが重要なのだ。

●畑中翔太(はたなか・しょうた)
博報堂ケトルクリエイティブディレクター。アクティベーション領域を軸に手段とアプローチを選ばないプランニングで、「人を動かす」統合キャンペーンを数多く手掛ける。 これまでに国内外の150以上のアワードを受賞。Cannes Lions 2018 Direct部門審査員。2018年クリエイター・オブ・ザ・イヤー メダリスト。

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