1982年5月1日、「スローモーション」でデビューした中森明菜。デビューから40年目に突入する節目に、セカンドシングル「少女A」の作詞を手掛けた売野雅勇さんに、楽曲が生まれた時代ならではな豪快秘話と明菜の魅力を語ってもらった。

中森明菜ジャケ写で振り返る40年【写真30枚】

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――先生が初めて明菜さんに書かれた『少女A』の詞は、どのようにして生まれたのでしょうか?

売野 当時、僕は、作詞家や作曲家を数多く抱えている事務所に所属していました。その事務所のマネージャーから「中森明菜という新人アイドルの、アルバム収録曲のコンペに出す詞を書いてほしい」と言われたのが、すべての始まりです。それまでアイドルの詞を手がけたことがなく、締切まで一行も書けなかった僕は、以前書いた詞をリメイクすることにしました。

 その詞は沢田研二さんのために書いてボツになったもので、「男性がプールサイドで少女を誘惑する」という内容だったのですが、「同じ設定で、誘惑される少女を主人公にして書き直せば、中森明菜の詞になるかもしれない」とひらめいたんです。『少女A』というタイトルはこのときもう決めており、自分でも気に入っていました。
 
 これに、同じ事務所に所属していた作曲家がメロディーをつけ、レコード会社(ワーナー)にプレゼンしたところ、一旦はボツになったんですが、2週間ほど後に、ワーナーから「詞だけ生かして、別のメロディーをつけてほしい」と事務所に連絡がありました。そこで、やはり同じ事務所に所属していた芹澤廣明さんのストック曲の中から、ワーナーのディレクターの島田雄三さんと一緒に最も良さそうなものを選び、メロディーに合わせて言葉をはめ直し、『少女A』の詞ができあがりました。

 ちなみに、最初の詞はサビの部分が弱かったんですが、芹澤さんのメロディーに合わせて書き直すときに「じれったい じれったい」というフレーズが生まれました。

――初めて明菜さんの声で歌われる『少女A』を聴いたときの印象はいかがでしたか?

売野 ワーナーから送られてきた完パケのテープを聴いたときは、「すごい曲になったな」と衝撃を受けました。『少女A』というタイトルにはインパクトがあるし、メロディーもいいし、萩田光雄さんのアレンジもイントロのギターもかっこいいし、明菜ちゃんの歌が曲にぴったりハマっている。

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「少女A」はとにかく運の強い曲