■「かちこちマインドセット」と「しなやかマインドセット」


 
 スタンフォード大学の心理学者であるキャロル・ドゥエック教授曰く、人間のマインドセットには、才能は生まれつき決まっていると考える価値観の「かちこちマインドセット」と、努力によって人は成長できると思える「しなやかマインドセット」の2種類ある、とのこと。
 
 そして子どもがどちらのマインドセットになっていくかは、親の接し方が影響してきます。

 例えば、親から頻繁に、「100点がとれてすごいね」「賞がとれて偉いね」と結果ばかりを褒められた子どもは、「次に100点とれなかったらどうしよう」という不安から、挑戦することに対して消極的になっていきます。

 つまり、自分が果たして今より上にいけるかどうかに関して疑問を抱いてしまい、現状を維持しようとするため、マインドセットが固くなるのです。

 対して、「失敗したけど頑張ったね」「たくさん勉強をしたから良い点が取れたね」など、成長までの過程を重点的に褒められた子どもは、どんどん努力して挑戦し、親に褒められようとします。そこで成長していく自分を実感できるため、しなやかなマインドセットになっていきます。

 よくマウンティングをしてくる人がいますが、それは「自分の能力はすでに決まっているもの」と考えている、かちこちマインドセットの人の特徴なのだそう。能力はこれ以上伸ばすことができないという気持ちが根底にあるため、今現在持っている能力を誇示して勝負しなくてはと考えるのだそうです。

 自分の子どもがどちらのマインドセットでいてほしいかと聞かれたら、たくさん挑戦し、失敗を恐れずに上を見て成長していく、しなやかマインドセットでしょう。

 ただ、人間の心の持ちようなんて、一朝一夕で作られるような簡単なものではないため、変化させるのは難しい作業です。

 かちこちに固まってしまった価値観を徐々に柔らかくしていくために、それでは、どのような手段を使えば良いのか。そこで効果を発揮してくれるのが、「伝記」というアイテムなのです。

■「失敗していいんだ」を偉人たちが教えてくれる

 伝記の中では、主人公がたいてい非常に大きな困難にぶつかります。しかしそれを乗り越えて、世界的に認められるものを作り上げたり、素晴らしい業績を残したりします。

 つまり、しなやかマインドセットをもった人物の人生を知ることで、自分の気持ちを「失敗してもいいんだ」「努力すればこんなことができる」という方向に向けていくのです。

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