写真はイメージです(Getty Images)
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北原みのり(きたはら・みのり)/1970年生まれ。作家、女性のためのセックスグッズショップ「ラブピースクラブ」代表
北原みのり(きたはら・みのり)/1970年生まれ。作家、女性のためのセックスグッズショップ「ラブピースクラブ」代表

 作家・北原みのりさんの連載「おんなの話はありがたい」。今回は、生理用品について。

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 今月13日、ドイツ人男性2人と男性投資家が、使い捨てタンポンやナプキンを処理する際に使うグローブを販売したようとしたところ、世界中の女性たちから物笑いのタネにされてしまった。

 きっかけはドイツのテレビ番組。ビジネスアイデアを発表し投資家を募る番組で、2人の男性はこんな話をした。僕たち10年前に女性と一緒に暮らしたとき、使用済みのタンポンを見て考えたんです。使用済みのタンポンやナプキンを衛生的に処理する良い方法はないのか?と。そんな疑問からこのアイデアが生まれました。それがこの、ピンクのグローブです。女性の皆さん、タンポンを取り出すときにこのグローブをはめてください。手も汚れませんし、タンポンをもったグローブをそのまま外してタンポンを巻き込むようにすれば、あら不思議! タンポンは見えなくなり、しかも衛生的に捨てられる優れものなんです!! というわけだ。

 このグローブのアイデアに1人の男性投資家が3万ユーロ(約390万円)の投資を決め、彼らがさっそく製作したところ……もう、これがすぐに炎上してしまう。「バカ?」「は? むしろチンコ用のピンクのグローブでもつくったら?」「経血を汚いと思ってるの?」「使い捨てナプキンすら地球環境問題だとされているのに、これ以上ゴミ増やしてどうする?」「生理のない男が指図するなよ、差別か!?」。激しく笑われて、怒り狂われたのだった。当然彼らはすぐにこの商品の回収を決め、HP上で「私たちの考えが間違っていました。でも誰にでもミスはあります。事実に基づいた議論を今後深めていく必要を感じます。でももう、家族への誹謗中傷や殺人予告はやめてください」という内容の文章を発表した。

 このニュースを見て私も大笑いした一人だった。タンポン取り出し専用グローブ!? しかもピンク! 経血もピンク色にしてやろーか? ひーっ!などと海外に住む友人とフェイスブックでひとしきり悪口でもりあがったのだけれど、ふと冷静になる。あ、もしかしてこれが日本だったら……ここまで炎上しただろうか。もしこれが……。若い日本人男性2人組が「女性がもっと快適に生理期間を過ごせるために、僕たちは考えました! 女性たちと暮らしているときに考えたんです。彼女たちが使用済みの生理用品を恥ずかしさを感じずに、そして衛生的に処理できる方法。しかも可愛らしいパッケージに入れて、可愛らしいピンク色で、女性が抵抗感なく使えるようにしたいと思いました」などと爽やかに笑いクラファンで資金を集め、そこに若手男性投資家が「いいですね、女性活躍、僕たちも応援すべきです。ジェンダーギャップ指数120位の汚名、僕たちも一緒にはらしたい」とか言って、生理処理用グローブキャンペーンとか始めたら……日本の女たちはもしかしたら「ありがとう~」くらいなこと言っちゃうんじゃないかな、と不安になるのであった。少なくとも「バカかこいつら! チンコ用グローブでもつくっとけ!」とかいう反応をする女の方が、「使い捨てタンポンをそのままむき出しに捨てる女」として、なにか攻撃を受けそうだ。

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北原みのり

北原みのり

北原みのり(きたはら・みのり)/1970年生まれ。女性のためのセクシュアルグッズショップ「ラブピースクラブ」、シスターフッド出版社「アジュマブックス」の代表

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タンポンは注射針レベルだった?