患者さんの口の中に入れるドリルや鏡、ピンセットなどはほかの患者さんにも使います。

 これらは使用するたびに病原菌を無毒化するための処置をしなければなりません。細菌やウイルスを殺す働きのある薬液につける、消毒液で洗浄するなどいくつかの方法がありますが、現在はオートクレーブ(高圧蒸気滅菌器)で病原菌を完全に死滅させる方法が推奨されています。

 オートクレーブを使う歯科医院はコロナ禍の影響もあって、増えてきています。滅菌中は器具の使用ができないので、ドリルなども多めに準備しておく必要がありますが、昨年はドリルの発注に生産が追い付かない時期があったのです。感染拡大防止支援金(コロナの感染対策のための器具などの購入に支援金が出る措置)も追い風となったようですが、結果的に患者さんのメリットにつながっているといえます。

 今後も感染対策を徹底し、安心してみなさんに歯科医院に通ってもらえるようにしなければなりません。また、何より、一日も早いコロナの収束を願うばかりです。

注:
「コロナウイルスは口の中、唾液に多く含まれている。なのでマスクが有効だし、飲食の場も指摘される。一方で利用者側がマスクができない環境に歯科医院がある。大阪には5500もの歯科医院があるが、クラスター発生はゼロ。感染対策の賜物と思うが、何かある。何か?専門家には、是非分析してもらいたい。」
(2021年1月19日 吉村洋文知事がツイート)

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若林健史

若林健史

若林健史(わかばやし・けんじ)。歯科医師。医療法人社団真健会(若林歯科医院、オーラルケアクリニック青山)理事長。1982年、日本大学松戸歯学部卒業。89年、東京都渋谷区代官山にて開業。2014年、代官山から恵比寿南に移転。日本大学客員教授、日本歯周病学会理事を務める。歯周病専門医・指導医として、歯科医師向けや一般市民向けの講演多数。テレビCMにも出演。AERAdot.の連載をまとめた著書『なぜ歯科の治療は1回では終わらないのか?聞くに聞けない歯医者のギモン40』が好評発売中。

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