そしてチェンと数々の名勝負をみせてきたのが、ソチ・平昌と五輪を連覇した26歳の羽生だ。今回の世界選手権では、羽生本人によれば「ちょっとしたトラブルがちょっとずつ続いて」いたフリーで調子を落とし、総合3位に終わった。しかし、ショートでは4回転2本を含むすべての要素を完璧に滑り切って首位発進している。ロックナンバー『Let Me Entertain You』に乗ったスターオーラ全開の演技は、改めて唯一無二の存在感を世界に示すものだった。優勝した昨年末の全日本選手権のように、ショートとフリーをそろえた時の羽生を上回るのは、誰にとっても簡単なことではない。

 軽々と北京五輪の最大出場枠「3」を手にした、最強の日本男子。来季は、世界で一番高いレベルの五輪代表選考が繰り広げられるだろう。(文・沢田聡子)

●沢田聡子/1972年、埼玉県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、出版社に勤めながら、97年にライターとして活動を始める。2004年からフリー。シンクロナイズドスイミング、アイスホッケー、フィギュアスケート、ヨガ等を取材して雑誌やウェブに寄稿している。「SATOKO’s arena」