オリックス時代の伊原春樹監督 (c)朝日新聞社
オリックス時代の伊原春樹監督 (c)朝日新聞社

 巨人・原辰徳監督が昨年7月1日のDeNA戦の8回、四球で自滅した澤村拓一をベンチ内で公開説教するシーンがテレビで中継され、説教直後の澤村の涙と併せて大きな反響を呼んだ。

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 1軍の選手ともなれば、ふつうなら人の目に触れない場所で叱るものだが、それでも同じミスを繰り返すと、指揮官は「まだわからないのか!」と一人前扱いをやめ、時には公開説教という荒療治を施すようだ。

 過去にも期せずしてテレビに映しだされてしまった公開説教は、少なからず存在する。

“闘将”星野仙一監督が、不甲斐ない投球で降板した若手投手にベンチから退去を命じる事件が起きたのが、楽天時代の2014年5月14日のオリックス戦だ。

 入団2年目のドラ1左腕・森雄大は、4月24日の西武戦でプロ初勝利を挙げると、5月1日のロッテ戦でも連勝で2勝目を記録した。だが、続く西武戦は5回2/3、ロッテ戦も5回で降板しており、いずれも3与四球と、先発要員として微妙な内容だった。

 この日のオリックス戦も、森は立ち上がりから制球が定まらず、1、2回に1点ずつを失うと、3回にもT-岡田、坂口智隆に連続四球を許し、無死一、二塁のピンチを招いてしまう。3回途中で計4与四球。星野監督の我慢も限界に達し、上園啓史への交代を告げた。

 直後、思わずビックリのシーンがテレビに映しだされる。ベンチに戻った森に、星野監督が厳しい顔つきで叱言を浴びせると、「ここから出ていけ!」と外に向かって右手を突き出したのだ。

 森は言われるままにベンチを退出。行き先はブルペンだった。星野監督は降板後の森に異例のブルペンでの投げ込みを命じたのだ。

 そして、試合が終わると、2軍落ちを通告。森は球場に置いてあった荷物をまとめると、報道陣に「ファームです!頑張ります!」と告げて、タクシーに乗り込んだ。

 星野監督は森の入団時から「将来は12球団で2、3本の指に入る左投手になる。(同期の)藤浪(晋太郎)、大谷(翔平)を上回る可能性はある」と高く評価。期待が大きいがゆえの愛のムチだったが、森はその後も左鎖骨付近の血行障害などで伸び悩み、現在は育成契約中。一日も早く天国の恩師に完全復活を報告したいところだ。

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久保田龍雄

久保田龍雄

久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。

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