99年に11勝を記録した川越英隆は、02年5月5日の近鉄戦で勝利を挙げたのを最後に、足掛け3年にわたって14連敗中。

 この日の近鉄戦も、2回まで無失点に抑えたが、2対0とリードした3回に一挙5点を失い、ついに15連敗。阪急・梶本隆夫のパ・リーグワースト記録まであと1となった。

「2試合続けて先発の役目をはたせず、チームに申し訳ない」と肩を落とす川越に、「同じことを繰り返している」と激怒した伊原監督は、試合中にもかかわらず、ベンチ内で延々と公開説教を行う。そのシーンはテレビでも中継され、相手の近鉄ナインも唖然とするほどだった。

 だが、その効果は、8日後のロッテ戦で現れた。「弱気なピッチングだけはすまい」と自らに言い聞かせてマウンドに上がった川越は、7回を無失点に抑え、720日ぶりの白星を手にしたのだ。

 公開説教のご利益とも言うべき好投に、伊原監督も「今日は川越さんに尽きる。今日みたいなピッチングをすれば勝てる。何かを得たと思いますよ」とニッコリ。

 この年、川越は5年ぶりに規定投球回数に達し、7勝を挙げている。(文・久保田龍雄)

●プロフィール
久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。最新刊は電子書籍プロ野球B級ニュース事件簿2020」(野球文明叢書)。

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久保田龍雄

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久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。

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