「日本は逆で、インスタをチェックする人ほど“リア充”なのかもしれません。可愛いものを見よう、流行をキャッチしようという面が出ているのかなと思います。ただ、『閲覧』にしかメンタルヘルスにいい影響が見られなかったということは、もしかすると、『発信』をよくする人には競争心理によるマイナスの面があるのかもしれません」(桜井さん)

 ほかのSNSでは、中年層ではLINEで頻繁に連絡を取る人の「悩み・抑うつ傾向」が低く、またFacebookで発信を頻繁に行っている人は「満足感・幸福感」が高いことがわかった。匿名性の高いTwitterと異なり、顔の見える友人・知人のつながりがメンタルヘルスの維持に役立つと考えられる。

 桜井さんがSNSとメンタルヘルスの関連を調査した出発点は、「人のつながり」が健康に強く影響する、という研究だった。

 同研究所は、1000人超の高齢者を6年間追跡調査。その結果、「閉じこもり」(外出頻度が1日1回未満)かつ「社会的孤立」(家族以外との交流が週1回未満)の傾向がある人は、死亡リスクが高いことがわかった。

「最近のメタアナリシス(複数の臨床研究のデータを、統計的手法を用いて解析し、より信頼性の高い結果を示すこと)から、たばこをあまり吸わない、お酒を飲みすぎない、運動をしている、太りすぎていないといった要素よりも、社会的つながりを介した支援の量が多い、社会とのつながりの種類や量が多いといった要素のほうが、じつは健康に強い影響を与えることが分かってきました」(桜井さん)

 私たちはどのようにSNSとつきあっていけばいいか。桜井さんは「バランスを取ること」だと言う。

「相手の顔が見えるのか見えないのか、テキストベースなのかイメージベースなのか、といったSNSごとの特徴をふまえることが大事かと思います。また今回の調査では、対面の会話や電話の頻度も調査しましたが、じつはこれが最もメンタルヘルスに影響していたのです。SNSだけでなく、こうした会話があったうえでSNSを活用することが重要だと思います」

 今後は、因果関係の検証や、SNSを利用している時間との関係についても研究をしたい、と桜井さんは話す。使い方によって毒にも薬にもなるSNS。バランスに気をつけて活用していきたい。

(文/白石圭)