週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2021』より
週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2021』より

 週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2021』では、全国の病院に対して独自に調査をおこない、病院から得た回答結果をもとに、手術数の多い病院をランキングにして掲載している。また、実際の患者を想定し、その患者がたどる治療選択について、専門の医師に取材してどのような基準で判断をしていくのか解説記事を掲載している。ここでは、「前立腺がん治療」の解説を紹介する。

【図解】前立腺がんの治療選択の流れはこちら

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 前立腺がんは、男性特有の臓器である前立腺に発生する。

 年間の患者数は約9万5千人で、男性のがん患者数の第4位を占める。60代後半から罹患者が増えてくる。

 前立腺の病気としてよく知られている前立腺肥大症とはまったく別の病気で、両者の関連は低い。排尿困難などがあらわれる前立腺肥大症とは異なり、前立腺がんは初期には自覚症状に乏しい。しかしPSA(前立腺特異抗原)検査の普及で、初期の段階でみつかるケースが多くなった。

 監視療法(PSA監視療法)、手術、放射線治療、薬物療法と治療の選択肢は多い。ほかのがんの治療では、放射線治療は手術の補助的な治療という場合が多いが、前立腺がんでは単独でも、根治的な治療として位置づけられている。

 手術では2012年に保険適用になった「ダビンチ」によるロボット手術が多くの病院で実施され、主流になっている。

 放射線治療の主流は、X線をからだの外から当てる外照射だ。直腸や膀胱など、周辺の臓器への影響を減らすため、新しい放射線(陽子線など)や照射法も開発されている。また、前立腺の中に放射線を放出する物質を埋め込む内照射(小線源療法)もおこなわれている。薬物療法には、ホルモン療法薬と抗がん剤が用いられる。

 前立腺がんは初期に診断されれば、完治が可能ながんの一つだ。また、悪性度が低いものは進行がゆるやかであるため5年生存率は高く、10年生存率も治療成績の指標として用いられることがある。

 前立腺がんは、初期(がんが前立腺内にとどまるT2期まで)で悪性度が低ければ、前立腺全摘除術(手術)、放射線治療の成績はほぼ同等で、どちらを選んでも治療後の生存期間に大きな差はないといわれる。

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