99年、父の阪神監督就任とともにヤクルトから移籍してきたカツノリは、後任の星野仙一監督の体制下で出番が激減し、前年は1軍出場ゼロ。「1軍のベンチに座っているのは耐えられても、30歳で2軍のベンチに座っているのは辛い」と移籍を希望していた。

 一方、巨人も夏のアテネ五輪で正捕手の阿部慎之助が日本代表に選ばれると、1、2軍とも捕手が手薄になるという理由から、カツノリ獲りに動く。

 当時は阪神も“野間口詣で”の真っ最中で、カツノリは“掌中の珠”とも言えたが、「阪神のエゴではなく、とにかくチャンスを与えてやりたい」(野崎勝義球団社長)とすんなり送り出している。

 同年、巨人は野間口獲得に成功し、カツノリ(巨人では本名の野村克則)はたった1年で戦力外に。真相はどうあれ、“人質”の印象は免れなかった。

 世間を騒がせたり、実効が上がらなかったり、これまであまり良い印象がなかった両球団のトレードだが、山本がそんな負のイメージを払拭できるかどうか、今季の働きぶりが注目される。(文・久保田龍雄)

●プロフィール
久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。最新刊は電子書籍プロ野球B級ニュース事件簿2020」(野球文明叢書)。

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久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。

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