そうして始まった二世帯の同居。まずは、代表と俺の女房の主導権争いだ。今のところ、代表がピンフォールして、女房がカウント2で返すような攻防が続いているね。そんなときの俺はガムをかみながら知らんぷりだ。こういうときは北の富士さんから学んだ「俺知らな~い」というスタンスが役に立つよ(苦笑)。

 同居してみて思ったのは、夫婦2人だといつも決まった会話になるけど、4人いると話の輪が広がるし、いろいろな情報が入ってきて面白いということ。若い時は他に人がいると、自分の空間が侵されているようで気になったもんだけど、歳をとると人がいる安心感の方が強くなるとつくづく思ったよ。リモコンや爪切りを取ってくれと頼める人も増えて便利だね。まあ、これはずっと自分で取れと女房、代表から怒られていることだが……。

 旦那の方も住んでみて印象がずいぶん変わったね。勤勉で雑用もよくこなしてくれるし、こんなに真面目に働く男だとは思わなかった。ほら、娘のこれまでの彼氏を知らないわけじゃないから、時々「あの時のあの男だったら、アイツは何もしなかっただろうな」と思うこともあるよ(笑)。それに旦那は電機や機械関係に強くて俺はめっきり。これまでは女房に頼んでいたけど、今は旦那に頼んでなんでもやってもらっている。

 ちなみに旦那もプロレス好きだけど、天龍源一郎の世代じゃない。だから同居前はナメられないように昔の試合を観戦させて俺のすごさを見せつけていた。でも一緒に住んでいるとメッキがはがれつつあるな。今の俺は“春先の土筆”“雪どけのつらら”と一緒。どんどん先細りする一方だ(笑)。それでも、旦那にはまだプロレスの教育をしているんだ。「この試合はこうで~」って、他のレスラーの悪口を言いながらね。俺はプロレス界の立川談志だ(笑)。

 これまでの俺の主従関係は女房しかいなくて、いつも「自分が自分が」でなんでも通っていたけど、同居すると相手に対しての心遣い、思慮が出て、相手を敬うことになる。そういう気持ちに変わるから、自分にとってもいいことだ。世の中の熟年の人もそういう気持ちになってね、若い人も迎え入れる器量を持ってくれるようになったらいいね。今のお年寄りは年金も退職金ももらっているから、若い人にとっても心強いじゃない。娘に子どもが生まれたとしてもすぐ預かってやれるし、娘も働ける。頼れる人が身近に多いのは誰にとってもいいことだよ。嬉しいことは2倍で悲しいことは分散できる。家族の存在は生きていくうえで大きいと思うよ。

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71歳、新しい未来がまた出てきた!