子供の頃の夢や憧れを仕事にできる人はごくわずかだ。とくにダンスや音楽などの芸術分野では、才能の壁や生活の安定など、様々な理由から夢を諦め、リスクの少ない幸せな道を選んでいくことも珍しくはない。学生時代は日本屈指の男子新体操選手で、現在はアクロバットパフォーマーの難波諒太さん(28)は、そんな状況を変えようと画策中だ。

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「僕のまわりにいた才能ある選手たちは、大学4年生になると、みんな就職のために引退していきました。これだけ認められているのにどうして……と、すごく悲しくて。だから職業のひとつとしてパフォーマーを選択できるようにしたいんです」

 男子新体操には、手具を扱う個人競技(スティック・リング・ロープ・クラブ)と、手具を扱わない団体競技がある。女子と異なるところは、アクロバティックな動きが組み込まれていることで、団体競技は徒手体操(跳躍、倒立、バランス、柔軟の静止技)と転回系(タンブリングや組運動)で構成される。難波さんは国士舘大学在学時に団体のキャプテンを務め、全日本選手権大会3位の成績を修めた。

「中学のころ、バク転に憧れて。公園に行って一人で練習していたんです。自己流だったけど、クラスで披露すると『すごい!』とキャーキャー言われてうれしかった」

 北海道出身の難波さんが新体操と出合ったのは高校時代。新入生オリエンテーションの部活紹介だった。

「たまたま入った高校が男子新体操の強豪校で、当時道内では2校にしかなかった男子新体操部があったんです。アクロバットな技をバンバン披露しているのを見てすごいなと思って、友達と一緒に部活の見学に行きました」

 男子新体操は野球やサッカーなど他の競技と同様、子供の頃からやっている経験者が多いため、高校生になってから始めても歯が立たないのが”常識”だという。

「基礎がない分、苦労しました。開脚では90度も開かないほど体も硬かったんです。ストレッチで先輩に6人がかりで乗られたり、倒立の練習をやりすぎて白目が充血したり。そういう時代だったのできつかったですが、それでも僕は、楽しさの方が勝っていたので続けられました」

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