卒業後、アルバイトをしながらパフォーマーとしての活動をスタートさせた。

「ダンサーやスタントマン出身が多い中、新体操出身というのは強かった。コンテンポラリーも踊れるし、もちろんアクロバットもできる。ミュージカルやアーティストのツアー、海外の仕事もどんどん入ってきました。ひとつのところで認められると、もっと大きな世界につながっていく。『新体操の技術ってすごいんだ』と改めて思いました」

 パフォーマーとしての収入も徐々に増え、仕事がどんどん舞い込む順風満帆のなか、27歳になった難波さんは、ふと立ち止まる。

「ある時、先輩パフォーマーと同じ道をたどっていることに気がついたんです。年齢を重ね、『もうバク転はきついから側転に変えよう』なんて話している人を、僕はたくさん見てきました。今は舞台でスポットライトを浴びていられる。でも体が動かなくなったら、あとは講師としての道ぐらいしかない。だったらそうなる前に、何か手を打たないといけない。そこで、受けきれなくなった仕事を知り合いにつなげるキャスティングの仕事を始めて、企業とダンサーをつなぐ代理店のような仕事をしたり、SNSのディレクションやイベントの提案をしたり。でもまだまだ狭い世界。もっと大きな世界で活躍したかった」

 そして難波さんは、ついに現役引退を決意する。まだまだ体力的にも充実している中での引退。これからは教育者として後進を育てていきたいと語る。

「新体操の技術があると、エンターテイメントの世界で成功できるということをもっとみんなに知ってほしい。やっぱり世間体だと思うんですが、パフォーマーというと好きなことをするためにバイト暮らしをしているというイメージが強い。そもそも男子新体操を知らない人も多いですし、だからこそ、経営者側に回って下から業界を押し上げていきたい。技術があってエンターテイメントに興味がある子供たちがパフォーマーとして生きていけるように、近い将来、育成スクールを作ろうと思っています。他の養成所との違いは、月に一度はステージに立って技術を確認できる機会をつくること。そして卒業後は、僕が企画するショーやテーマパークのステージに立ってもらうなど、プロとして活躍できる場を広げていく予定です」

(宇津木有紀)

◆プロフィール
なんば・りょうた/クリエーター、パフォーマー。北海道出身。国士舘大学男子新体操部でキャプテンを務め、全日本選手権大会で3位に入賞。卒業後はAKB48や三代目J Soul Brothersなどアーティストのバックアップやイベントの主催、「ABChanZoo」などテレビでも活躍中。