FAでの移籍が濃厚と見られていたがヤクルトに残留した山田哲人 (c)朝日新聞社
FAでの移籍が濃厚と見られていたがヤクルトに残留した山田哲人 (c)朝日新聞社

「野球人生の分岐点ということで、環境を変えてゼロから挑戦していくか、それとも慣れ親しんだヤクルトスワローズでもう一度優勝を目指していくか、葛藤がありました。悩む中で、今までの苦楽を共にした仲間ともう一度、優勝したいという気持ちが強くなりました」

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 昨季終了後にFAを宣言し、年の瀬の12月25日にヤクルト残留を発表した小川泰弘(30歳)は、新たに4年契約を結んだ契約更改後の会見で、そう話したという。

 昨年、2年連続のセ・リーグ最下位に沈んだヤクルトは、オフには投打の主力の流出危機に見舞われていた。自身5年ぶりの2ケタ勝利となる10勝を挙げたチーム勝ち頭の小川だけではない。シーズン打率3割・30本塁打・30盗塁を3度クリアしている「ミスター・トリプルスリー」の山田哲人(28歳)、昨季はリーグ3位の20セーブをマークした守護神の石山泰稚(32歳)も、国内FA権を取得していたからだ。

 ところがフタを開けてみれば、山田と石山が早々とFA権を行使せずに残留すると発表。一度はFAを宣言した小川も含め、3人とも複数年で再契約の運びとなった。

「いろいろ考えたが、球団の誠意、愛をすごく感じた。監督、コーチ、選手、そしてファンの方々にも残って欲しい、来年以降も同じユニフォームを着て戦いたいという言葉をたくさんいただいた。勘違いかもしれないが、自分は愛されていると感じた。自分の居場所はこのチームだと感じて、残留を決意した」(山田)

「シーズン中からずっと必要だという言葉をいただいて、4年契約をさせてもらうことになりました。ヤクルトでFAを取れたのは嬉しいですし、ここまで育ててもらった恩がある。こういう契約をいただいたので、ヤクルトでずっと活躍できればなと思っている」(石山)

 冒頭の小川も含め、それぞれのコメントから感じられるのは球団に対する「愛着」である。その根底にあるのは、チームの「居心地の良さ」だろう。ヤクルトという球団は家族的な雰囲気や選手に対する面倒見の良さから、古くから「ファミリー球団」と言われてきた。その“伝統”は今も受け継がれている。

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オリックスから移籍の坂口も語る“居心地の良さ”