◆芥川賞 2010年上半期 赤染晶子=京都外国語大
「芥川賞に平成8年度本学ドイツ語学科卒業の赤染晶子(本名・瀬野晶子)さんの『乙女の密告』(新潮6月号)が選ばれました。芥川賞作家の誕生は本学初めてとなります。語学を専攻する学生にとっても大きな励みとなり、なによりも今回の卒業生の快挙は本学のたいへんな誇りであります」(10年7月16日)

◆芥川賞、2016年上半期 村田沙耶香=玉川大
「本学文学部芸術学科2002年卒業の村田沙耶香さんの『コンビニ人間』が、第155回芥川賞の受賞作に決定しました。(略)このたびの受賞、本当におめでとうございます。(略)玉川大学キャンパスでは、教育学術情報図書館内に、卒業生村田沙耶香さんのコーナーを設け、在学生たちに村田さんの作品を紹介しています」(16年7月29日)

 最後に2020年の主な文学賞受賞作家の出身大学を並べてみた。この中から,将来、芥川賞、直木賞の受賞者が出てくるかもしれない(すでに両賞の受賞者を含む)

江戸川乱歩賞 佐野広実『わたしが消える』=横浜国立大
柴田錬三郎賞 伊坂幸太郎『逆ソクラテス』=東北大
新潮新人賞 小池水音『わからないままで』=慶應義塾大
新潮新人賞 濱道拓『追いつかれた者たち』=明治大
太宰治賞 八木詠美『空芯手帳』=早稲田大
谷崎潤一郎賞 磯崎憲一郎『日本蒙昧前史』=早稲田大
新田次郎文学賞 河崎秋子『土に贖う』=北海学園大
野間文芸賞 小川洋子『小箱』=早稲田大
野間文芸新人賞 李龍徳『あなたが私を竹槍で突き殺す前に』=早稲田大
松本清張賞 千葉ともこ『震雷(しんらい)の人』=筑波大   
紫式部文学賞 中島京子『夢見る帝国図書館』=東京女子大
山本周五郎賞 早見和真『ザ・ロイヤルファミリー』=国学院大
織田作之助賞 温又柔『魯肉飯のさえずり』=法政大

 2020年下半期の芥川賞、直木賞の候補者もチェックしておこう(公表されているデータから)。

◆芥川賞
砂川文次=神奈川大
乗代雄介=法政大

◆直木賞
芦沢央=千葉大
伊与原新=神戸大
坂上泉=東京大
長浦京=法政大

 作家と出身校に因果関係を求めるのはむずかしい。ただ、作品に描かれたキャンパスが作家の出身大学による経験に基づいたものであれば、少しは関係性を見出せる。

 三田誠広の芥川賞受賞作『僕って何』(1977年上半期)では学生運動と恋愛を描いている。朝井リョウの直木賞受賞作『何者』(2012年下半期)は就職活動で悪戦苦闘する学生たちが主役だ。三田、朝井いずれも早稲田大出身であり、在学中、身の回りに起こったことが参考になっていると言える。

 宇佐見りんには、ぜひ、学生群像を描いてほしい。在籍校を公にしていないゆえ、どの大学がモデルとなっているのかを想像することも、小説の楽しみの方の一つとなろう。

<文中敬称略、出身大学は中退も含む>

(文/教育ジャーナリスト・小林哲夫