佐藤ママ:人間は、自分が生まれた時代を必死で生き抜かなければならない運命にあります。だから、今の時代に生きていることを恨んだりすることは見当違いです。未知のウイルスの流行は100年に一度の事態かもしれませんが、冷静に対処すればいいだけです。感情的になって嘆いても意味がありません。

 今は、いつもより厳格な感染予防は欠かせませんが、そのほかのことは今までの受験生と何も変わりません。受験場に行って合格を目指して必死で目の前の問題を解けばいいのです。今後コロナの状況がどのようになっていくのか、全く読めないし、まして来年の今ごろはどのようになっているのか想像すらできません。このような時には、楽観的に考えずに、できるだけの心構えをするべきなのです。だから、受験生は「今年しかない」という気持ちで臨んでください。

 そもそも受験は大変なものです。幸い受験生自身が感染していないならば、いつもの入試と何も変わらないので全力で頑張ってほしいですね。

――佐藤さんは、試験を受けられるだけでも「御の字」といっていますが、それはどういう意味でしょうか。

佐藤ママ:受験生にとって、今年入学試験が実施されて本当によかったのです。コロナの状況がもう少し違ったものだったら入学試験はなくなっていた可能性もあります。だから、予定していた入試がなくならなかったこと、そのことを大事に考えてほしいのです。過去には1969年の東大紛争で入試が中止になったこともありましたし、戦時下では門戸は狭く苦しい受験だったでしょう。あなた方と同じ年ごろの子どもたちですから、それは大変だったと思います。

 また、昨今の社会情勢を鑑みれば、家庭の事情で進学をあきらめた人もいるはずです。共通テストの受験料は3教科以上ならば18000円です。決して安くはありません。それを親御さんが払ってくれて、共通テストは無事に実施されるから、受けられるだけでも御の字ということです。だから、受けられることにまず感謝してほしいですね。

 やれることを最後までやって、感謝の気持ちをもって試験に臨む。人間は、感謝の気持ちがあると問題を丁寧に解こうとしますから、それが目の前のチャンスをしっかりつかむことにつながるのではないでしょうか。

――佐藤家の4人のケースでは、すべての入試がスムーズにいった印象が世の中にはありますが、「今年度の受験は無理かもしれない」と覚悟したときもあったとか。

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4月はほどんど学校にいけなかった長女