日々の生活のなかでちょっと気になる出来事やニュースを、女性医師が医療や健康の面から解説するコラム「ちょっとだけ医見手帖」。今回は「この冬のインフルエンザ」について、NPO法人医療ガバナンス研究所の内科医・山本佳奈医師が「医見」します。
【グラフ】昨年47200件で今年は63件! こんなに違うインフルエンザ報告数
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明けましておめでとうございます。2021年も、皆様に読んでいただけるよう、外来診療で感じたことや、タイムリーな記事をお役にたつ情報を盛り込みながら、コラムを書いて参りたいと思っております。どうぞよろしくお願いします。
今年の年末年始は帰省せずに新年を迎えた、という方も多いのではないでしょうか。私も、昨年は一度も大阪の実家に帰ることができなかったので、せめて年末年始は日帰りでもいいから帰省したいなと思っていました。しかし、クリスマスを終えたあたりからでしょうか。外来診療を行っていると、38度を超える発熱を訴える患者さんが日に日に増えてきました。そして、新型コロナウイルスPCR検査で陽性を認める患者さんが多くなってきたのを目の当たりにし、帰省はやめたほうがいいと考えるにいたりました。
冬のクリニックといえばインフルエンザです。一昨年までは、年末年始やお正月などお構いなしに全国的に猛威をふるっていました。例年であれば、12~3月に流行のピークを迎えます。しかしながら、インフルエンザの流行が拡がり始めた2019年12月、中国武漢市で発生した新型コロナウイルスの感染が短期間で急速に世界中に拡がっていくのとは反対に、日本を含む北半球におけるインフルエンザの流行はみるみる減少。外来診療の現場では、インフルエンザの検査をしても陽性にならない、そもそも例年のように高熱や咳症状がひどくなって受診するという患者さんが受診することが少なかったのでした。
一方、南半球では、北半球とは季節がほぼ真逆です。そのため、例年であれば、4~9月にかけてインフルエンザの流行のピークを迎え、その後減少していき、感染は収束します。しかしながら、2020年のシーズンでは、例年のように流行の兆しは見られたものの、その後の流行は見られませんでした。