ホームランを打つということに関して中田を超える存在と感じたのはやはり清宮幸太郎(早稲田実→2017年日本ハム1位)だ。ただ1年の春に見た時は正直中田ほどの強い印象は残っておらず、2学年先輩の加藤雅樹(現東京ガス)に比べるとまだまだスイングのキレもヘッドスピードも物足りないというメモも残っている。

 その後に出場した夏の甲子園でも楽しみな1年生というイメージは変わらなかった。そんな印象が変わったのが2年秋になってからだ。東京都大会の決勝では桜井周斗(日大三→DeNA)のスライダーの前に5打席連続三振を喫していたが、続く明治神宮大会では決勝で安田尚憲(履正社→ロッテ)との対決に注目が集まる中、いきなり第一打席でホームランを叩き込んで見せた。

 この頃から軽く振っているようでもヘッドの走りがより鋭くなり、翌年春以降も注目される中でホームランを量産。3年春に3本、夏に1本現地でホームランを目撃したが、いずれも軽々とスタンドまで運んでいるように見えた。ホームランを打つということに関しては、やはり歴代ナンバーワンだったことは間違いない。

 そしてもう一人打者として大きな魅力を感じたのが前田健太(PL学園→2006年高校生ドラフト広島1位)だ。ゆったりとした大きな構えでトップの作り方にも悪い癖がなく、柔らかく大きいフォロースルーも大きな特長。中田や清宮よりも上手くバットに乗せてホームランにしている印象が強い。

 特に高校生活最後の試合となった3年夏の大阪大会、東大阪大柏原戦では先発した冨田康祐(元DeNA)が大量失点を喫し、コールド負けの危機となったところで放った満塁ホームランは鳥肌が立つくらいの素晴らしいものだった。もちろん投手としてもドラフト1位に相応しい選手だったが、野手として勝負しても大成していた可能性は高いだろう。

 高校からプロ入りした打者が1年目に残した成績という意味では、やはり清原が圧倒的なナンバーワンである。プロとアマチュアのレベル差は開いてきているが、いつか清原を超えるような1年目からホームラン王争いを演じるような打者が出現することを期待したい。(文・西尾典文)

●プロフィール
西尾典文1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行っている。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

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西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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