打撃でも非凡な才能を見せていたPL学園時代の前田健太 (c)朝日新聞社
打撃でも非凡な才能を見せていたPL学園時代の前田健太 (c)朝日新聞社

 筆者は一年で平均して約300試合アマチュア野球を現場で見ているが、基本的にドラフト候補となる有望選手を追いかけていることもあって、プロ選手顔負けのプレーを目撃することも少なくない。そこで今回はそんな驚きのパフォーマンスを見せたアマチュア選手について、ここ数年レベルアップが目覚ましい高校球児に絞って振り返ってみたいと思う。なお対象は筆者がデータをとり始めた2001年以降にプレーした選手としている。今回は打撃編だ。

【写真】「平成で最もカッコいいバッティングフォーム」はこの選手!

 強打者で真っ先に思い出されるのが中田翔(大阪桐蔭→2007年高校生ドラフト日本ハム1位)だ。その名が知れ渡ったのは2005年夏の甲子園。初戦の春日部共栄戦でレフト中段まで届く決勝のホームランを放つなど4安打3打点の大活躍を見せ、リリーフとしてマウンドに上がり、投手としても140キロを超えるスピードで見事な投球を見せたのだ。

 2学年上にはともにドラフト1位でプロ入りすることになる辻内崇伸(元巨人)と平田良介(中日)が在籍していたが、この試合に関してはその二人を上回る強烈なインパクトだった。1年秋からは不動の4番としてホームランを量産していくことになるが、2年夏のバッティングも印象深い。当時は今よりもアッパー気味のスイングで穴は大きい印象だったが、初戦の横浜戦ではバックスクリーンの左に、打った瞬間に分かる一発を放っている。

 そして後日、対戦した横浜のメンバーに聞いた話が興味深いものだった。名参謀として知られる小倉清一郎部長(当時)も当然中田のことは相当マークして調べていたが、真ん中低めのゾーンには「ホームラン」と書かれており、そこに投げてしまったら本当にホームランになったというのだ。いくら得意なコースとはいえ、甲子園の大舞台でデータ通りに本当にホームランにしてしまうバッターはそうはいないだろう。

 この後の早稲田実戦では斎藤佑樹の前に3三振を喫してチームも敗退したが、翌年春の佐野日大戦では1試合2ホームランを放ち、更に進化した姿を見せていた。甲子園通算13本塁打という圧倒的な記録を持つ清原和博(元西武など)も高校生で初めて自分より凄いバッターが出てきたというコメントを残しており、その規格外のパワーは高校野球の歴史に残るものと言えるだろう。

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西尾典文

西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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