要するに安倍政権期、官房長官だった菅氏は徹底して安倍氏に尽くした。それと同じことを下(官僚)にも求めるんだろうと平嶋氏は言うんです。何かやれと指示されたら四の五の言わずにやる。いや、やれと指示などされる前に忖度して動く。それを「快感」と捉えるのが為政者としての菅氏の本質かもしれません。

――菅首相は「頑固だ」と評されることも多いですが、異を唱える周囲の意見には耳を傾けない頑なさが、判断の遅れにつながっていると見る向きもあります。感染者数が右肩上がりになる中で、GoToトラベルをなかなか停止しなかったのも、そうした菅首相の性格も関係しているように思います。

青木:これも僕には真相がわかりません。ただ、こうした為政者の振る舞いは、中長期的に見ていくと官僚組織はもとより、この国の社会から活力や創造性を失わせていくことに僕たちはもっと危機感を抱くべきです。異を唱えれば人事的な制裁を受けかねない官僚組織からは闊達な対案やアイデアが出てこなくなり、さまざまな専門的見地から政治に異論を唱えるべき学術会議のようなアカデミアも萎縮傾向を強めていきかねない。社会全体に忖度病が蔓延していく。人事権は大きな政治権力ですが、こうした使い方をしていると組織や社会はますます沈滞します。

――官僚だけでなく、メディアへの監視も強まっている気がします。11月下旬、首相官邸の情報発信を担う内閣広報室が、ニュースやワイドショーなどでの発言内容を記録した900ページ以上もの資料を作成していたことが報じられました。青木さんの発言も対象となっていたようです。

青木:まあ、あの程度のことは内閣情報調査室(内調)あたりが昔からやってきたことなので、さほど驚きません。「世論の動向」なるものをチェックし、政権にご注進しているわけです。そんなことに貴重な税金と人員を使うのはバカげた話ですが、それよりもはるかに怖いのは、杉田氏や北村氏の出身母体である警備・公安警察が擁する巨大な情報ネットワークです。以前、元文科事務次官の前川喜平氏が歌舞伎町の「出会い系バー」通いを大手紙に書き立てられましたが、この情報もそうした背景から出てきたと考えるべきでしょう。

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杉田官房副長官が「部下」だった警察を動かす