甘露寺蜜璃(左)と胡蝶しのぶ。漫画「鬼滅の刃」のカバーより
甘露寺蜜璃(左)と胡蝶しのぶ。漫画「鬼滅の刃」のカバーより

 2020年後半の話題をさらった漫画『鬼滅の刃』と「劇場版 鬼滅の刃 無限列車編」の大ヒット。鬼と戦う「鬼殺隊」の最強の剣士たち「柱」には、2人の女性剣士、甘露寺蜜璃と胡蝶しのぶが登場する。2人は、これまでの少年漫画における女性キャラクターとは一線を画す位置付けにあり、戦いの女神のように、鬼vs人の戦況に影響を及ぼす。本来「女神」とは、神話などに登場する、女性の姿をした神的存在を意味する。しのぶと蜜璃は自らの身を賭して戦い、命を救われた人々から「女神」のように敬われ、愛された人物である。戦いの女神(ミューズ)として物語の中で重要な役割を果たす、甘露寺蜜璃と胡蝶しのぶについて考察する。
※以下の記事には、『鬼滅の刃』コミックス既刊分のネタバレが含まれます。) 

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■鬼殺隊「柱」のうち、2人の女性剣士

 2020年10月26日発売の週刊少年ジャンプで、『鬼滅の刃』キャラクター人気投票が行われた。15位までにランクインした女性キャラクターには、「鬼殺隊」の「柱」である胡蝶しのぶ(こちょう・しのぶ)、甘露寺蜜璃(かんろじ・みつり)が名を連ねる。

 甘露寺蜜璃と胡蝶しのぶは、その外見からは想像のつかない強さを読者に見せつけたキャラクターである。しのぶは、初登場シーンで、水柱・冨岡義勇(とみおか・ぎゆう)から、絞め技を受けながらも平然と会話をする。蜜璃は、隊員たちが束になっても苦戦する鬼・半天狗の技をあっさりと刀で切る、という妙技をみせる。

■炭治郎すらときめく「女性」としての魅力  

『鬼滅の刃』の主人公・竈門炭治郎(かまど・たんじろう)は、妹とともに風呂に入ることもためらわず、訓練時に、女性たちから近寄られても、触れられても、とくに気にとめる様子もない。炭治郎は、そもそも女性を意識することがないキャラクターである。そんな性格の炭治郎が、めったに見せないドキドキした表情をしめす場面がある。
 

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植朗子

植朗子

伝承文学研究者。神戸大学国際文化学研究推進インスティテュート学術研究員。1977年和歌山県生まれ。神戸大学大学院国際文化学研究科博士課程修了。博士(学術)。著書に『鬼滅夜話』(扶桑社)、『キャラクターたちの運命論』(平凡社新書)、共著に『はじまりが見える世界の神話』(創元社)など。

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いつも「怒っている」胡蝶しのぶ