「僕の作品は自給自足のようなもの」作家・道尾秀介さんが累計発行部数600万部突破記念スペシャルインタビューで明かした執筆の裏側

朝日新聞出版の本

2021/01/08 19:00

■仮面の内側は他の人には見えない『笑うハーレキン』

――主人公がホームレスの家具職人という設定は、どのように生まれたのでしょうか。

道尾:僕と同年代の飲み仲間に家具職人がいて、仕事はどんな感じなのか聞いたら、面白い話がいっぱい出てきたので、家具職人を主人公にした話を書きたいと思ったんです。また、高校の頃とか、街で夜通し遊んで、明け方になるとホームレスの方とお喋りしたりしてたんですけど、異常にリアルな雀の鳴き真似ができるおじさんとかいるんですよ。生活スタイルによって、知識の守備範囲や特技が全然違う。その面白さを描きたくて、ホームレスの家具職人とその仲間たちを書きました。

――主人公の物語としては完結していますが、後半に出てくる謎の老人の正体や目的がわからないままだったりするなど、敢えてすっきりしない部分を残している意図はなんでしょうか。

道尾:主人公の過去は作中で説明されますが、奈々恵やホームレス仲間の過去など、はっきり書かれていないことが多いです。でも実際の人生ってそうじゃないですか。つきあった時間のことしかお互いに知らない。だからわからないところは、敢えてわからないまま残しました。仮面の内側は他の人には見えない、という本作のテーマと合致させたんです。

■その執筆活動の集大成といえる最新刊『風神の手』

――最後に最新刊の『風神の手』についてお伺いします。この作品は、エピローグを含め全四章からなる長篇ですが、最初は第二章の「口笛鳥」を朝日新聞の夕刊に中篇として連載するというかたちで執筆されたんでしたね。

道尾:中篇を書くときも短篇を書くときも、大前提として、ひとつの作品として完璧なものをまず目指します。のちのち連作や長篇の一篇に使おうなんて思いながら書くと、質が下がっちゃうので。だからいつも、ひとつの完成品として中篇や短篇を書いたあとで、それをどうやって本にするかを考えます。『風神の手』の場合はひとつの町を舞台に、長い時間をかけていろんな物語が絡み合って、でも元を辿ればほんの小さな出来事が原因だった――という仕掛けにしようと思いました。そこで他の三章を書いて、この形に仕上げたんです。

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『風神の手』は道尾秀介小説の集大成的作品?

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