その成果もあってか、今シーズンは腰痛の影響を感じさせないピッチングを披露したが、メジャー球団側に懸念がないわけではない。

「コンディションが不安視されているのは間違いない。昨年かなり悩まされた腰痛の影響が大きい。数年前ならすぐに手を挙げる球団はいくつもあったはず。年間通じ安定してローテーションを守れる投手が重宝される。そのため特に新入団選手の身体検査を入念にする。少しでも不安がある場合は契約金額も下がるし、獲得見送りもある。興味がある球団は情報収集を改めて行っている最中」(在米日本人スポーツライター)

 とはいえ菅野に関しての高評価は不変である。技術、スタミナ、メンタルのすべてが超一流レベル。加えて日本人投手への評価が再び上がっているのも追い風。今年は変則シーズンではあったが、ダルビッシュ有(カブス)、前田健太(ツインズ)の2名がサイ・ヤング賞の最終候補3名にまで残る活躍を見せた。

 だが、メジャー球団が慎重にならざるを得ない理由はコンディションの問題だけではない。

「腰痛とともに菅野獲得を左右するのが、各球団の経営状況。コロナ禍でシーズンの大多数が無観客で行われた影響で、収益は激減している。ヤンキースやドジャースなどの超人気球団も同様。活躍した選手も、今年は減俸を受け入れざるを得なくなっている。菅野の場合、年俸とともにポスティング料も発生する。メジャーで1球も投げていない投手に多額の投資をするなら、実績ある選手を選ぶというのは間違ってはいない」(在米日本人スポーツライター)

 大リーグは開幕が延期されただけでなく、レギュラーシーズンを60試合に短縮した上に無観客で開催。中立地でのポストシーズンについては、約1万人の観客をようやく入れることができた。開幕前段階で大リーグ機構と選手会の合意で、今季年俸は試合数に比例させると決まっていた。来年も同様のケースが想定されるとともに、スター選手でも減俸を受け入れなくてはならない状況。買手側に当たる各球団からすると、リスクは避けたいというのが本音だ。

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獲得に興味を示す球団はあるが…