1999年のドラフトで西武からドラフト4位指名を受けた猪爪義治(OP写真通信社)
1999年のドラフトで西武からドラフト4位指名を受けた猪爪義治(OP写真通信社)

 10月26日に行われたドラフト会議で、オリックスが育成6位で指名した内野手・古長拓(BCリーグ・福島)は、身長164センチの小兵で、26歳という年齢に加え、今季は36試合出場で打率1割5分5厘、0本塁打、2打点と、打撃成績もパッとしない。堅実な守備がセールスポイントで、監督に逆らうことも辞さない“我の強さ”が評価されたそうだが、ツイッターでトレンド入りするなど、ファンの間でも「なぜ指名されたの?」と注目の的になった。

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 だが、過去にも、古長同様、プロ入り前にこれといった実績がなかったにもかかわらず、サプライズ指名された選手がいる。

 古長同様に、指名直後、「イノツメって誰だ?」と会場がざわめいたのが、1999年の西武4位・猪爪義治だ。

 まったくのノーマークだったのも道理。試合で投げるのは、年間数試合のみ。それも近所の草野球の試合で、助っ人に駆り出されるときだけだった。

 埼玉工大深谷高時代は、背番号10の控え投手で、130キロ程度の直球を横と上から投げ分ける変則右腕だった。

 3年夏の県大会では、5回コールド勝ちした初戦の狭山経済高戦で1失点完投。チームが敗れた5回戦の大宮東高戦でも先発しているが、当時はドラフトで指名されるレベルの投手ではなかった。

 高校卒業後、建築現場やうどん店でアルバイトするフリーター生活の一方で、プロ入りを目指して、週に3、4日、知人のスポーツインストラクターが組んだ練習メニューをもとに、行田市の実家近くの公園でトレーニングを続けた。

 巨人など4球団のテストを受けたが、不合格。そんななかで、高校時代の猪爪から「何かを感じた」西武の前田俊郎スカウトが、助っ人として出場した草野球の試合も見に行くなど、熱心に見守りつづけていた。

 そして、ドラフト直前に極秘でテストしたところ、横手から140キロの速球を投げたことが決め手となり、“隠し玉”指名が決まった。

 猪爪は2年間、1軍のマウンドに上がることなく、01年オフに退団したが、実は同期にもう一人、「誰だ?」と話題になった隠し玉がいた。6位指名で、準硬式出身の青木勇人(同大)である。

 青木はご存じのとおり、01年に46試合にリリーフ登板して4勝を挙げるなど、広島時代も含めて11年間、活躍した。

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久保田龍雄

久保田龍雄

久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。

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実績がなくともスカウトの目に留まった選手たち