■人間には、変化を嫌う性質が備わっている

 では一体どうすべきなのかというと、自分から宿題をやるのが「習慣」になるまで、さりげなく誘導していくのです。人には、ホメオスタシス(恒常性)という変化を嫌う性質が備わっているため、一度習慣になったものは、やらないと逆に気持ちが悪くなります。トイレから出るとき、自然に手を洗っているのも、洗わないと汚いと感じるのも、習慣になっているためです。 

 ただ、「自分からやるよう誘導する以前に、そもそも全く宿題に手をつけないのですから、それをどうやって習慣にすればいいんでしょう?」という家庭もあるでしょう。宿題をやらせるために、有効な手段が三つあります。

 一つは、「ご褒美」を利用する方法です。家に帰ってすぐ宿題をやれば、「アイスを食べていいよ」「お菓子を食べていいよ」「ゲームをしていいよ」と、ちょっとしたご褒美を事前に用意しておくのです。子どもは意外に損得勘定が得意なので、「やったほうがいいぞ!」と気づけば、結構すんなりとやってくれます。

 二つめは、宿題を「しなさい」ではなく、一緒に「しよう」という言葉を用いるのです。これなら命令形ではないため、無理にやらされている感がなくなります。

 さらに、子どもは誰だって親に活躍する姿を見てもらいたいもの。ですから、横で宿題を見ながら、「こんなのが解けるなんてすごい」「前はできなかったことができるようになっているね」と、小さなことでもどんどん褒めてあげましょう。そうすれば、徐々に自信をつけて、「自分はこんなにやれる」という姿を見てもらいたがるようになります。 

 三つめは、誰か理想のロールモデルを挙げ、その人の話で子どもの心を動かす、という方法です。尊敬する歴史上の人物や、好きな野球選手やサッカー選手の名前を出して、 「この人は家に帰ったらすぐに宿題をやっていたらしいよ」と言ってみると、子どもの中に「じゃあ自分もやろう」という気持ちが自然と湧いてきます。

 人は無意識のうちに、「ああいうふうになりたい」と思っている人の行動に影響を受けるからです。ちなみに、「イチロー選手」「宿題」で検索すると、かなり心に響く言葉が出てくるのでオススメです。

 ここで、目的は「真実を伝えること」ではなく、「宿題をやらせること」であるという点を忘れてはいけません。偉人の子どものころの逸話なんて、そうそう誰しも残っているものではないでしょう。ですから、その人が本当は宿題をやっていなくても、「やっていたのだ」と言い切ってしまえばいいのです。

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