■宿題をがんばっていい成績をとれば、将来の選択肢は増える

 たとえば私の息子は宇宙が好きなので、 宇宙飛行士の毛利 衛さんや、野口聡一さんの写真を見せて、「この人たちは宿題をうんとがんばったから、宇宙の仕事ができる人になれたんだよ」と伝えています。

 さらに、「宿題程度もがんばれない子は、JAXAに来ないでくださいって言われるよ。でも、もし宿題をがんばっていい成績をとれば、うちに来てくださいって誘われるくらいになるよ」とたたみかけています。

 就職の仕組みなんて、高校や大学生の後半になってこないと分からないものですから、 「へえ、そういうものなんだ」と思わせておくのです。事実、宿題をがんばることで賢くなり、偏差値が上がれば、将来進む道の選択肢は増えるわけですからうそをついているわけでもありません。

 そういえば先日、息子が、「宿題は家だと嫌だけど、学童でみんなでやるのはすごく楽しい」と、びっくりする発言をしてくれました。

「宿題が楽しい?」と、一瞬、自分の耳を疑いましたが……確かに、家の中で一人で宿題をやっていると、どうしても自分だけががんばっていると思いこんでしまいがちです。しかし、学童や塾などみんなが努力しているところに交ざると、集団帰属意識とともに、みんなのやる気にあてられて、宿題をやりはじめるまでのハードルが一気に下がるのではないでしょうか。

「宿題をやらないからこんな成績を取るのだ」と説教してどんどん勉強嫌いにさせるのは悪手です。自らやることに自分なりのメリットが見いだせるよう、親が手をひいてあげることが大切なのです。

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杉山奈津子

杉山奈津子

杉山奈津子(すぎやま・なつこ) 1982年、静岡県生まれ。東京大学薬学部卒業後、うつによりしばらく実家で休養。厚生労働省管轄医療財団勤務を経て、現在、講演・執筆など医療の啓発活動に努める。1児の母。著書に『偏差値29から東大に合格した私の超独学勉強法』『偏差値29でも東大に合格できた! 「捨てる」記憶術』『「うつ」と上手につきあう本 少しずつ、ゆっくりと元気になるヒント』など。ツイッターのアカウントは@suginat

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