みそ汁は朝食の定番ですが、発酵食品としてみその効能を考えると、新しい発見があります。みそ汁を朝に飲むのは理にかなっていて、みそ汁を沸騰させてはいけないと言われるのにも理由があるのです。改めて、みそ汁の魅力とその作り方の基本を、発酵料理研究家で『二十四節気のお味噌汁』(WAVE出版)を出版した山田奈美さんに聞きました。
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「毎朝みそ汁を飲んでいます。朝はみそ汁だけという日もあります」
と話す山田さん。山田さんにとって、みそ汁は健康維持の“飲む薬”だそうです。
みそは、大豆に麹と塩を加え、微生物の働きで発酵させて作られる発酵食品。大豆そのものより消化吸収しやすく、アミノ酸などのうまみ成分をはじめ、さまざまな栄養素が豊富に含まれています。
「例えば、老化防止に役立つビタミンE、コレステロールを下げるレシチンやサポニン、女性ホルモンに似た働きをするイソフラボン、腸内環境を整える乳酸菌やオリゴ糖、代謝に必要な酵素などです。薬膳でもみそは胃腸を温め、気や血の巡りをよくし、解毒すると重宝されます」
薬膳の考え方では、朝は排せつの時間。朝は1日の中で大腸が最もよく働き、不要なものを体外に出そうとします。朝ごはんは消化がよく、排せつを促すようなものを食べるといいそうです。
こうした点から、みそ汁は朝に飲むのが効果的といえます。腸内環境を整える栄養素を含み、消化がいいうえ、具となる野菜も食物繊維などが豊富で、便通を促してくれるからです。
もちろん、身体にいいのは、朝に限ったことではありません。
「季節の野菜や魚介類をみそ汁に入れることで、さらにメリットが高まります。旬の食材は最も栄養価が高く、またその時期に起こりやすいトラブルを未然に防ぐ薬効を持っているからです」
誰でも簡単に作ることができますが、みそ汁は決して沸騰させないことがポイントです。理由は風味が失われるからと昔から言われてきましたが、みそが発酵食品という点を踏まえるとそのポイントが理解できます。
「みその風味は微生物が作り出すアルコールなどの揮発成分によるものなので、沸騰させるとその成分が飛んでしまいます。また、ぐらぐら煮ると酵素も死んでしまいます。表面がぐらっと揺れる煮立ち始めの“煮えばな”が、火を止めるタイミングです。香りや風味が最もいい状態になります」