また、ビーガンは料理にナッツ類や植物性の脂質、糖質を多用する傾向があるため、メニューによっては高カロリーでバランスの悪い食事になってしまうこともある。例えば、朝食にビーガンのドーナツ、昼食は大豆ミートなどのビーガンハンバーガーにフライドポテトとソーダ、夕食にビーガンのピザなどは、食材が植物性といえども「不健康」だろう。ビーガンだから痩せやすい、普通の食事だと太りやすいとは一概にいえないようだ。

 神経障害が起きる恐れ…ビタミンB12不足

 タンパク質以外では鉄分も不足しがちだ。タンパク質と鉄分が不足すると、免疫力が落ちたり、貧血気味になったり、疲れやすくなったりする。

 これらは、不足を短期間で実感しやすいが、気をつけねばならないのがビタミンB12。サケやシジミなどの魚介類に多く含まれ、不足すると神経障害が現れるという。しかも異変を感じるまで時間がかかるそうだ。

「何らかの対策をとらないと必ず不足する栄養素です。植物性の食材には含まれないので、サプリメントやビタミンB12が添加された食品などを摂取する必要があります。神経障害が顕著になるまでは、少し時間がかかる傾向があるので、興味本位でビーガンを始めた人の場合は神経障害が現れる前にやめるケースも多いようです」

 このように、単純に動物性食品を除去する食生活は、必要な栄養素が不足して体調不良に陥ることがあるので、初心者は注意しておきたい。

 また、ビーガンを続けるためには、栄養の知識だけでは不十分だ。知らず知らずのうちに動物性のものを摂取していることもあるのだ。調味料や出汁、スープストックに動物性食材はよく使われているほか、サプリメントに動物性のゼラチンが含まれていることもある。

 特に日本ではあらゆる加工食品にカツオやいりこのエキスや粉末が使われているので、強い意思を持って、常に細心の注意を払わないと、完璧なビーガンは難しいかもしれない。それゆえ、海外でビーガンだった人が日本在住の間は、魚は食べるベジタリアンの「ぺスカテリアン」に変更したというケースもあるそうだ。

 さらに、周囲の理解も不可欠となる。せっかくの食事やパーティーで友人らと同じ物を食べられなくなることも想定しなければならない。

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クリスマス、お正月、誕生日など記念日に困ったケース