肉を食べないというと「ヘルシー」なイメージがある。ただ、普通の食生活をしているものからすると、素朴な疑問がある。

本当に必要な栄養素が足りるのだろうか。そして、「代用肉」はおいしいのだろうか。

■ 実はダイエットには不向き? その理由とは

 懸念されるのが栄養の偏りについて、海外の事情にも詳しく、All About「栄養管理・療養食」ガイドで、管理栄養士の一政晶子さんにビーガンのメリットと注意点などをきいた。

 まず、どんなメリットがあるのか。

「外食や加工食品ばかりの食生活だった人が、栄養に興味を持つきっかけになると思います。動物性食品やありとあらゆるところで使われています。和食の出汁も動物性です。加工食品には動物性のエキスが入っていることが多いです。パンやお菓子にも乳製品が含まれていないか、細心の注意が必要でしょう。自炊が不可欠になりますよね」

 現代人に多い、外食やコンビニに頼った乱れた食生活を立て直すには適しているようだ。栄養に気を付けるようになれば、病気のリスクを抑えることにもつながる。

「動脈硬化が進んでいる人が脳梗塞や心筋梗塞を予防する、尿酸値が高い人が痛風を予防するといった理由で食事制限を始める人もいます」

 ならば、ダイエットにも効果があるのではないかと期待が高まるが、そう簡単な話ではないらしい。

 その理由のひとつとして、ビーガンは、タンパク質が不足しがちなことが挙げられる。日本食品標準成分表で、身近な食材に動物性たんぱく質と植物性たんぱく質がどれくらい含まれているのかを比較してみよう。例えば、豚肉肩ロース赤身100グラムあたりに含まれるたんぱく質は、20.9グラム。対して、木綿豆腐は6.6グラムと、3分の1にも満たない。タンパク質を摂取するには、シンプルに肉を食べる方が簡単なのだ。

「ほんの数キロやせたい人は別として、がっつり体重を落としたい人には不向きです。タンパク質が不足するようなダイエットは、どうしても筋力や日々の活動量が落ちてしまうので、痩せにくかったり、リバウンドしやすくなったりします。植物性タンパク質は動物性タンパク質より吸収性が低いので、その点からもタンパク質を十分に摂取することが難しくなってしまいがちです」

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疲れやすい、貧血気味、神経障害の恐れも