発表するならば、せめてもの恩返しとしてお世話になったところで――。

 この流れを聞いて、瞬間的に頭に浮かんだことがあった。今から7年前、岡村の相方・矢部浩之が婚姻届を提出した時の話だ。

 2013年3月27日。この日は矢部の結婚記念日であるとともに、また別のものがスタートした日でもあった。フジテレビがインターネット向けの放送を標榜して立ち上げた「ゼロテレビ」の放送開始日。矢部が婚姻届けを出した足で、いわば結婚ホヤホヤの状態で出演したのがゼロテレビ内の番組で、岡村が司会を務める「めちゃ×2ユルんでるッ!」だった。

 このゼロテレビを立ち上げたのが「めちゃイケ」を生み出した同局の看板プロデューサーだったのだが、当時、そのプロデューサーの身辺に変化があった。

 番組制作の場で長らく活動していたが、畑違いの部署に異動に。そこで立ち上げたのがゼロテレビだった。岡村が開局の目玉番組の司会に手を挙げたのは、プロデューサーへの恩義を感じてのこと。そこで、矢部も自分にできる恩返しが何なのかを考えたと聞く。

「めちゃユル」に矢部が登場したのは3月27日午後11時ごろ。婚姻届を提出したのが同午後10時ごろ。結婚したての状態で出ることがより一層、番組の値打ちを高めることにもなる。あらゆるところに恩返しの強い思いが表れていた。

 心根がつながっている。「ナインティナイン」というコンビが、ここからどんな花を咲かせていくのか、さらに注目していきたい。

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中西正男

中西正男

芸能記者。1974年、大阪府生まれ。立命館大学卒業後、デイリースポーツに入社。芸能担当として、故桂米朝さんのインタビューなどお笑いを中心に取材にあたる。取材を通じて若手からベテランまで広く芸人との付き合いがある。2012年に同社を退社し、井上公造氏の事務所「KOZOクリエイターズ」に所属。「上沼・高田のクギズケ!」「す・またん!」(読売テレビ)、「キャッチ!」(中京テレビ)、「旬感LIVE とれたてっ!」(関西テレビ)、「松井愛のすこ~し愛して♡」(MBSラジオ)、「ウラのウラまで浦川です」(ABCラジオ)などに出演中。著書に「なぜ、この芸人は売れ続けるのか?」。

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