「保険は加入前にじっくり検討すべき。必要ない人もいる」と話す乾医師(撮影/写真部・高野楓菜)
「保険は加入前にじっくり検討すべき。必要ない人もいる」と話す乾医師(撮影/写真部・高野楓菜)

図「人生におけるリスクへの対処」(監修/乾医師)
図「人生におけるリスクへの対処」(監修/乾医師)

 東京大学医学部を卒業し、現在、銀座アイグラッドクリニックの院長を務める乾雅人医師。大学院在学中に医療コンサルティング会社を設立し、大手保険会社の業務経験もあるという。その乾医師は、「現在の医療保険や死亡保険への加入はムダが多い」と話す。コロナ禍で医療保険や死亡保険に対するニーズが高まるなか、乾医師が話す「ムダ」とは何なのか、適切な保険の掛け方はあるのか、話を聞いた。

【図】「人生におけるリスクへの対処」はこちら

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―保険会社で医療コンサルタントをされていたと聞きました。そもそも、どのような業務内容なんですか?

大学院生時代に縁があって、大手生命保険会社のCFR(Closed File Review)という業務に就きました。すでに保険金支払いが完了した案件を再検証し、保険金の支払い要件や金額が適切かどうかをチェックする仕事です。例えば、がん患者が入院中に骨折した症例では、がんの骨転移が原因なのか、転倒が原因なのかによって、支払う金額は変わります。加入者(患者)側には診断書を書いた医師がいますが、繁忙のために書類の不備なども一定数はあります。保険金支払いの過不足がないかどうか、悪意を持った保険活用がされていないかなどを確認していました。

―そうした経験をされたうえで、なぜ「保険はムダ」だと考えているのですか?

そもそも“保険が必要ない人”もいます。深く検討せずに当たり前のように加入することに違和感を抱いているということです。

―「保険が必要ない人」とは?

「保険」をどのようにとらえるかで考え方は変わってくると思います。そもそも保険は、降りかかるリスクに対する対処行動です。図「人生におけるリスクへの対処」の様に「インパクトの大小」と「頻度の多少」の2軸で分類すると分かりやすいと思います。それぞれリスクの種類に応じて、「回避」、「保険」、「予防」、「保有」という行動を合理的な選択としています。本質的に、リスクに対して「保険」を掛けるのが合理的なケースは、頻度が少ないけれど起きたら大きなダメージがある事柄に対してのみだと考えています。

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