つちやかおりさん(写真/松永卓也・写真部)
つちやかおりさん(写真/松永卓也・写真部)
グループホームで、大好きな母とほほえみ合うつちやかおりさん(写真/本人提供)
グループホームで、大好きな母とほほえみ合うつちやかおりさん(写真/本人提供)
つちやかおりさん(写真/松永卓也・写真部)
つちやかおりさん(写真/松永卓也・写真部)

 グループホームに入居中の母(認知症・要介護3)との穏やかな時間を大切にされている女優・タレントのつちやかおりさん。しかし、そこに至るまでには、母の認知症をめぐる心の葛藤、兄とのいさかいなど、さまざまなことがあったそうです。現在発売中の『高齢者ホーム2021』(週刊朝日ムック)で話を聞きました。

【写真】認知症の母とつちやかおりさんはこちら

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■母が急に私を「姉」と言ったのがショックで

 うちの母は、すごくのんびりした性格なんです。天然なところもありまして。だから、もの忘れがあったり、会話がかみ合わないことがあっても最初のうちは認知症とは思わず、年をとったからかなぁくらいで、深く受け止めていませんでした。
 
 ただ、いま考えてみればおかしいな、と思う行動もあったんです。実家は工場をやっていて、母も手伝っていたので機械などを扱うのは得意だったはず。なのに、携帯電話一つ使えなくなったんです。いくら私や孫が説明しようが、メールすらできない。

「そんなことがわからないお母さんじゃないでしょ! いいかげんに話を聞いているんじゃないの!?」みたいな感じで怒ってしまったこともあります(苦笑)。でも、どうやっても覚えないので、ちょっとおかしいなと思い始めてきたのが、日常の中で認知症を疑い始めたきっかけです。
 
 決定打になった出来事は、私の知人のお店に母を連れていったときのことです。その知人に母が「いつも姉がお世話になっております」と言ったんです。急に母が私のことを「姉」と。すごいショックでした。その帰りに車まで行くときに、母が私の手を「どうしたらいいの」という感じで、ぎゅうっと強く握ってきたのを覚えています。それが、はっきりまずいなと思った日でした。

 しかし、私が「母は認知症だ」と思っても、家族で意見が分かれました。家族といっても父と兄と私の3人です。やっぱり男性陣が母の認知症を認めるまでが大変でした。

 父と兄は、母と一緒に暮らしていました。父は当時、すでに寝たきりでした。父としては、母を「おっちょこちょい」が「おっちょこちょいがひどくなった」くらいに思っていたのかもしれません。あとはやっぱり、認めたくない気持ちが第一だったのでしょうね。父も兄も、母の認知症を認めてしまったらどうなるんだろうって、どこかで思っていたのではないでしょうか。
 

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