それからは、母の施設を探そうという話になりました。探し始めてすぐに、近所のグループホームに空きが出まして。本当にタイミングよく入ることができてラッキーでした。

 2015年に入居した当初、母は私が帰ろうとすると、どうしても手を握って引き止めようとするんです。だからホームからは、「こちらの生活が落ち着くまで、1カ月くらい会わないようにしてもらえますか」と言われてしまいました。母のためとはいえ、私はその時期が一番苦しかったです。

 母はどんな気持ちでいるのかなと考えるとせつなくて……。ただ、相当症状は進行していましたし、母の「悲しい」「寂しい」という気持ちはどうやら一過性のもので、その後ずっと悲しいのかというと、またちょっと違うようで……。私も母のために会わずに我慢しました。

 私は、母をグループホームに入れてよかったと思います。ギリギリまで(自宅で)見てあげたいという気持ちもわかります。でも、ひとり歩きや火事のリスクなど、そういうことを考えると本当に難しいと思います。家族とはいえ介護に関しては素人ですし。
 
 今となったからわかるのですが、プロにお預けするのも愛情かなと。私は大好きな母のためにはよかったなぁと思います。 

つちやかおり
1964年東京都生まれ。79年「3年B組金八先生」で女優デビュー。82年、シングル「恋と涙の17才」で歌手デビュー。以降、リポーター、グラビアなどでも活躍。91年、タレントの布川敏和と結婚し、専業主婦となる。1男2女の母。2012年、20年ぶりに芸能界に復帰を発表。14年、離婚。現在、バラエティー番組に出演するほか、司会・リポーター業、歌手活動、舞台など多方面で活躍。認知症の母をもつ。20年12月12日、郡山市中央公民館で朗読劇「もしも8才の子供が大統領になったら」「ミックモックと夜の動物園」に出演。

(文/大田原恵美=アエラムック編集部)

※「高齢者ホーム2021」より抜粋