ちなみに、10月2日の「ノンストップ!」(フジテレビ系)で「頑張りすぎちゃうママ」についての議論が交わされた際「婦人公論」前編集長の三木哲男はこんな指摘をした。

「完璧主義の人ほどプレッシャーを受けやすい。頑張ってきた人ほど、自分への要求水準が高くなるんです」

 女子アナたちはもとより、トップ女優として活躍してきた竹内さんにも当てはまることかもしれない。

 また、自殺する人にはそれぞれが以前から抱えてきた欠落感や不全感が潜んでいたりもする。彼女の場合、デビューまもない10代後半にこんなことを口にしていたという。

「私、ちょっと複雑な家庭なんで戻る場所なんてないんです。だから、この世界で絶対に頑張らなきゃいけない」(「スポーツニッポン」)

 この時点で彼女は、両親の離婚と母の病死、父の再婚にともなう、継母とその子供たちとの同居という経験をしていた。18歳のとき、桜井亜美の小説『サーフ・ スプラッシュ』(幻冬舎文庫)の解説を担当した際には、まさに「複雑な家庭」ゆえの胸中をそこにつづっている。彼女は自分のことを「連れ子という荷物」と呼び「その思いが自分の心に無理を課していたとは気付かなかった」と書いていた。

 こうした事情を抱えての芸能界デビューは、彼女を強くもしただろう。しかし、強そうに見える人がじつはさびしい、というのもありがちなことだ。自分を「荷物」にたとえてしまうような心性は、往々にして、消えたい、いなくなりたいという衝動にもつながってしまうのかもしれない。

 デビュー当時、彼女を取材した友人は「とにかく淡々とした人」だと評した。同世代の女優やアイドルのような、キャピキャピした感じがなく、どこか醒めたところが異色だったようだ。それでいて、芝居をやれば喜怒哀楽を豊かに演じる感受性も秘めていたわけで、女優としては「複雑な家庭」がプラスに働いてもいたのだろう。

 ただ、感受性が豊かすぎるのも考えものだ。今回、母親の自殺ということから、金子みすゞのケースが思い起こされた。この童謡詩人は26歳のとき、3歳の娘をのこして自殺。夫との離婚が決まり、娘をとられそうになったことへの抗議の死でもあった。

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「ずっと母に置いていかれた子だと思っていた」