ただ、このマンションには顕在化していないリスクがあります。それは管理面。一体開発なので、全体の管理組合があるはずで、そこには元の地権者もたくさん入っています。彼らとタワー棟区分所有者は生き方も考え方も価値観も違います。もし、共に意見を出し合って大きな問題を解決しなければならないことが起こった時、うまくコミュニケーションが進むのかが心配です。とはいえ、このマンションはそうした管理の問題さえうまく解決していけば、資産価値をあまり落とさないヴィンテージになれる可能性が高いと思います。

■ブリリアタワー池袋
分譲会社/東京建物他
有楽町線「東池袋」駅徒歩1分
全432戸 2015年3月築 49階建て

 有楽町線の「東池袋」駅といっても、この路線をよく使う人でないとなじみがないはずです。ただ、不動産の業界関係者だったらすぐにわかるところ。有楽町方面から来ると池袋駅の一つ手前で、今やタワマンが林立するエリアです。

 このマンションが新築として販売されていたのはアベノミクスが始まったばかりの頃でした。新築時の平均坪単価は360万円前後ではなかったかと記憶しています。まあ、マイナーとはいえ地下鉄の駅から徒歩1分。悪くはないスペックです。

 特筆すべきは、このマンションの下層階には豊島区役所の本庁舎が入っていることです。これがこのマンションの資産価値を決定的にバックアップしています。というのは、区役所が入っているような建物は、いざという時でもインフラ整備の優先度がかなり高くなるからです。つまり大地震があってもし電気が止まっても、豊島区内で真っ先に復旧されるのはこの建物なのです。30~40年後に建物が老朽化しても、ただ「取り壊す」という事態にはなりにくいでしょう。

 人々は、そういうことに敏感です。東日本大震災の記憶が人々の心に刻まれていたことも幸いしたのでしょう。このマンションもあっという間に完売してしまいました。今では新築時の1.5倍くらいの価格で取引されています。もっとも、売り出す人は少ないので取引される物件数はさほどでもありません。こういうマンションは、市場が下降局面に入った時に買っておくとよいでしょう。資産価値の面でも、管理の面でも安心できる物件です。

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村上春樹の小説のような世界が手に入る?