身長2メートルという恵まれた体格を誇る秋広優人(右) (c)朝日新聞社
身長2メートルという恵まれた体格を誇る秋広優人(右) (c)朝日新聞社

 約1カ月後に迫ったプロ野球ドラフト会議。どの球団も指名候補の絞り込みに入っている時期ではあるが、アマチュア球界も例年と比べて試合数がかなり少なかっただけに、難しい判断を迫られることになる。またNPB球団自体も観客数の減少による収益の悪化が見込まれており、コスト削減の観点から支配下での指名人数を減らす球団が出てくることも予想される。そうなってくると重要なのが下位や育成で指名する選手だ。そこで今回はそんな需要にマッチした完成度は低いものの、大化けが期待できるスケール型のドラフト候補を厳選して紹介したいと思う。

 高校生で筆頭となるのが秋広優人(二松学舎大付)。まず何よりも魅力なのが身長2メートルという恵まれた体格だ。ポジションは投手と一塁手を兼任しており、投げても140キロ以上、打っても軽々とスタンドへ運ぶ長打力を備えている。これだけの素材であればもっと大騒ぎされても良いと思うかもしれないが、上位候補と言われないのにはもちろん理由がある。見るからにまだ体つきが細く、プレーの力強さはそれほど感じられないのだ。ピッチングでは重心が高く下半身の粘りも物足りない。

 打撃に関してもフルスイングに耐えうる体になっていないように見える。しかし大型選手にありがちな動きにギクシャクしたようなところがなく、長い手足を上手く使いこなしているというのは大きな長所である。長いストライドのランニングで脚力があるというのも魅力だ。どちらかというと将来性の針は野手の方に振れているように見えるが、投手としても非凡なものがあり、これだけの大きさで投手か野手か迷わせるプレーを見せること自体が才能の大きさを示している。プロでみっちり鍛えて身長に見合うだけの筋肉量がついた時に、どのようなプレーを見せてくれるかが非常に楽しみである。

 今年の高校生捕手は有力選手が少なくないが、そんな中であまり大きな話題にはなっていないものの、面白いのが中川拓真(豊橋中央)だ。チームは甲子園はもちろん東海大会の出場もないが、県内では力をつけている新興勢力で、2015年のドラフトでは同じく捕手の谷川原健太(ソフトバンク)が3位指名でプロ入りを果たしている。そして中川のポテンシャルも谷川原に負けないだけのものを秘めている。いかにもキャッチャーらしいたくましい体つきで、2.0秒を切れば強肩と言われるセカンド送球のタイムも夏の愛知独自大会では1.80秒をマークしている。

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西尾典文

西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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