菅首相は、田中総長の思いに応えてくれるのだろうか。かつて、田中総長は菅首相(当時、官房長官)についてこう触れている。

「菅義偉官房長官は法政の出身で、先日、食事をする機会があったんですけど、やっぱり『自分で考え、自分で決断できることが強み』というお話をされていましたから、それができる大学だったと思います」(「週刊朝日」 2014年5月23日)

 菅首相は法政大で「自分で考え、自分で決断できる強み」を学んだ。田中総長はそのことを大学の良さとして評価している。田中総長にすれば、菅首相の「決断」をしっかり注目します、お手並み拝見、といったところだろうか。祝意や喜びを示さず、「ご活躍を祈念」するにとどめたのは、田中総長ならではのエールなのかもしれない。

 一方、菅総理の出身高校、秋田県立湯沢高校はお祝い、喜びムードにあふれている。同校のウェブサイトでこう伝えている。

祝 菅義偉内閣総理大臣御就任(本校第19期生)
菅義偉先輩
内閣総理大臣ご就任
おめでとうございます!
 令和2年9月16日、本校19期生の菅義偉先輩の総理大臣ご就任を祝した垂れ幕を懸垂し、吹奏楽部による校歌・秋田県民歌の演奏、菅総理の座右の銘である「意志有れば道在り」をテーマとした書道部によるパフォーマンスにて就任を祝いました。

 校舎にはこんな垂れ幕がかかっている。

祝 菅義偉内閣総理大臣御就任(本校第19期生)
秋田県立湯沢高等学校 愛宕会・後援会・PTA・教職員・在校生一同

「一同」としたり、生徒に菅首相の座右の銘を書かせたり、教育機関として「政治的中立」に抵触していないか疑問があるが、学校にすれば一国の総理の誕生に、そんなことは気にしない、ということだろう。

 湯沢高校に比べると、法政大学のクールさはよけいきわだっていた。

(文/教育ジャーナリスト・小林哲夫