■郵便と鉄道は創業期からの縁

 郵便事業は1871年3月1日に創業され、翌1872年9月12日(旧暦。現在の10月14日)には日本初の鉄道が新橋~横浜にて開業した。実は開業前の試運転列車にて、旅客車両に郵便物を載せており、このときからスピーディーに郵便物を運ぶ手段を確立していた。

 その後、鉄道路線網の拡大とともに、郵便の利用者も急増。鉄道による郵便物の護送だけでは追いつかない状況となり、1892年4月から郵便物を車内で区分けする車両を導入し、効率化を図った。

 さらに全国各地に窓口を持たない鉄道郵便局を新設し、郵便事業が隆盛を極める。特に東京中央郵便局内に設けられた東京鉄道郵便局は、地下で隣接の東京駅に直結したうえ、線路を敷設。運搬用の車両を用いることで、手際よい業務を展開した。

 さて、郵便車の設計は国鉄が行いつつ、細部は郵政省(現・総務省)からのリクエストを極力採り入れている。車内の室内灯は国鉄よりもいち早く蛍光灯を導入、採光用の小窓、ホコリを車外に排出するための排塵機の設置、車外に郵便差し出口(一部の車両)を取り付けるなど、地味ながら職員が働きやすい環境を整えた。なお、車両は一部を除き、郵政省が保有した。郵便車は客車が多く、のちに貨車、電車、気動車も“参入”した。貨車を除き、郵便車と旅客車、もしくは荷物車を1両にまとめた合造車も存在した。

 しかし、国鉄の運賃引き上げによるサービス悪化、FAXや宅配便の普及により、郵便事業に陰りが見えた。郵政省は1983年に鉄道輸送を段階的に撤退し、機動力に優れたトラック、速達性に優れた航空機に切り替えることを発表。郵便物の車内区分作業も1984年2月に廃止された。

 鉄道による郵便輸送と鉄道郵便局は1986年9月30日に完全撤退し、114年の歴史に幕を閉じた。その後、1988年に青函トンネルと瀬戸大橋が相次いで開業することを機に、郵政省は、ゆうパックの一部を貨物列車による運送に切り替えた。現在はコンテナによる郵袋(ゆうたい)輸送も行っているという。

 最近では、2020年8月31日からJR東日本内房線江見駅(無人駅)の新駅舎内に江見駅郵便局(江見郵便局を移転、改称)を設け、鉄道と郵便の運営を一体化した。郵便局の営業時間内は、窓口できっぷや定期券などを購入できる。

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実は郵便番号にも鉄道が絡んでいる!