東京発米原行きの列車に連結された郵便車と、積み込まれる郵便物の山。積み込み作業は鉄道郵便局職員が行った。鉄道による郵便輸送が盛んな時代には、多くの主要駅でこのような光景が見られた。1942年撮影(C)朝日新聞社
東京発米原行きの列車に連結された郵便車と、積み込まれる郵便物の山。積み込み作業は鉄道郵便局職員が行った。鉄道による郵便輸送が盛んな時代には、多くの主要駅でこのような光景が見られた。1942年撮影(C)朝日新聞社
マユ36形郵便車の車内。ホームから投函できる郵便ポストが初めて設けられ、職員の左側にポストの取り出し口と押印台がある。車内に区分室が設けられ、郵便物は配送先ごとに分けられた。1949年撮影(C)朝日新聞社
マユ36形郵便車の車内。ホームから投函できる郵便ポストが初めて設けられ、職員の左側にポストの取り出し口と押印台がある。車内に区分室が設けられ、郵便物は配送先ごとに分けられた。1949年撮影(C)朝日新聞社
オユ36形では車体側面に郵便ポスト(右)が設けられ、駅のプラットホームから投函できた。1949年撮影(C)朝日新聞社
オユ36形では車体側面に郵便ポスト(右)が設けられ、駅のプラットホームから投函できた。1949年撮影(C)朝日新聞社
2019年に開催された「スタンプショウ2019」では、改元記念として特別に「宮内庁内郵便局」の風景印が押された(C)朝日新聞社
2019年に開催された「スタンプショウ2019」では、改元記念として特別に「宮内庁内郵便局」の風景印が押された(C)朝日新聞社

 政府が2015年から取り組んだ「ゆう活」(夏の生活スタイル変革)はちっとも浸透しなかったが、別の「ゆう活」は100年以上も前から浸透している。それは旅行貯金や風景印収集といった“郵便局をめぐる活動”で、旅好きの人、貸切バスの運転士、ガイド、アマチュア無線愛好家などに浸透しているという。鉄道と郵便は100年以上も前からつながりがある。“郵便局をめぐる活動”も含め、紹介しよう。

【貴重写真】列車の中で郵便物を仕分けする鉄道郵便局職員

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■旅行貯金は大正時代には始まっていた

 旅行貯金とは、郵便局の貯金窓口でお金(主に100円などの少額)を預けると、局名印が押されるもの。郵便局によっては複数の局名印を用意している。以前は主務者印も押印されたが、21世紀に入ると通帳が銀行と同じ様式に変わってしまったため、2005年3月からなくなった。

 意外なことに、旅行貯金は大正時代の時点ですでに始まっていた。1916年に発売された『現在の生活費から思はぬ貯金を産み出す法』(嘉悦孝子著、春秋社書店刊)によると、旅行先の郵便局でお金を預けると、通帳に押印されるスタンプ、金額が記念になるという。醍醐味はこの本の刊行から104年経過した2020年でも変わらない。

 同書に掲載された履歴の最初が「大正元年十二月五日 金五十銭 伏見」と明記されており、明治時代には確立されていたものと考えられる。

 さて、旅行貯金に関する著名人の寄稿もいくつかある。そのひとり、作曲家の古関裕而(こせきゆうじ)氏は、知り合いが公演先などの町で旅行貯金を趣味としていることを『郵政』1960年10月号(日本郵政公社広報部門広報部刊)で述べた。現在放送中のNHK朝の連続テレビ小説『エール』で、そのようなシーンが放映されることを期待したいものだ。

■一部の郵便局には風景印も

 郵便局によっては風景印という、イラスト付きの消印がある。郵便の窓口に、はがきを持ち込む、もしくは、その場ではがきを購入して依頼をすると、押印してもらえる。

 また、手紙を出す際に、窓口で風景印を指定することもできる。なお、ポストに投函した場合は、風景印は押印されないのでご注意願いたい。

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郵便事業創業の翌年1872年日本初の鉄道が開業